ナクソス・ミュージック・ライブラリ(以下NML)のトップページには週替りで推薦アルバムが掲載される“今週の一枚”というのがあるのですが、そこで今回採りあげられたディスクです。
★G.マーラー 交響曲第2番ハ短調『復活』
/クラウス・テンシュテット指揮 ロンドン・フィル【LPO】
ソプラノ:イヴォンヌ・ケニー
メゾ・ソプラノ:ヤルド・ファン・ネス
合唱:ロンドン・フィルハーモニー合唱団
(合唱指揮:リチャード・クック)
指揮:クラウス・テンシュテット
管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
1989年2月20日ライヴ
ロイヤル・フェスティヴァル・ホール(ロンドン)


→http://ml.naxos.jp/album/LPO-0044
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テンシュテット&ロンドン・フィルのマーラーはEMIにセッション録音した全集が有名ですが、今回LPO自主レーベルでリリースされたのはアーカイヴ用に録音されたものなのだそうです。私のPCに繋いでいる貧弱なスピーカーでは録音の良し悪しは特にこういった大曲ではわかりにくいのですが、少なくともホールの音響がややデッドなのくらいはわかりました(苦笑)。何年か前に改修されたそうですが、それからどうなりましたかねぇ・・・?
演奏時間は92分。バーンスタインのDG盤とほとんど変わりありません。『復活』では遅い方ですかね?(時間のデータはこちら http://www.hmv.co.jp/product/detail/3785547
で比較しています)
それでも(いかにもネチっこい)バーンスタイン盤と違ってこのテンシュテット盤は遅いという感じがしません。NMLには便利なことにハイティンク&シカゴ響のライヴ盤(シカゴ響の自主レーベルCSO)
も聴けるのですが、これなんて82分ですけど時間の差はあまり感じません。
実演でマーラー聴くのは好きなんですが、部屋で普段聴くのはたいていリラックスできる音楽をチョイスしますので、家で聴く分にはマーラーは避けることが多い・・・というか正直苦手なしとらす。このアルバムも『復活』では遅い方なので1回聴いたらいいや、くらいにはじめは考えてたんですが、1度聴いたら結構病みつきになって何度も繰り返してます。テンシュテットのマーラーは6番だと肺腑を抉るような凄まじさがあるのですが、これはなんていうか予想と違ってむしろ清々しい気分で終われる演奏です。NMLのレビューでは‘渾身の’とか‘熱い’という単語が出てきますけど、私は‘熱い’というよりも(いや確かに熱演なんですけど)‘心が洗われてスッキリする’と言った方が正確なように思えます。
上辺をなぞっただけの無機質なマーラーなんて絶対に演奏しないテンシュテットとロンドン・フィル。これがこのライヴ盤では意外にも人間臭くないようにすら感じたのは何故でしょう・・・?時期的には来日公演の4ヵ月後。東京での公演は私も聴きましたが(『英雄』がメインのプログラムで)、指揮姿や出てくる音楽は随分元気そうだったんですよね、喉頭癌の放射線治療中とは思えないほど。ともかく病気の方が一旦落ちついたことによる心境の変化が、この『復活』の演奏に現れてるのかなぁ・・・と適当に邪推したりしながら聴いてました。
時間の長さを感じさせないほど第1楽章からとても充実した濃い演奏ですが、特に第4楽章以降・・・天上界から光が差し込んでくる錯覚すら時に覚える、熱気の裏になんとも不思議な清らかさ漂う印象の演奏です。マーラーの音楽に潜むウラオモテにもなんら過不足ないのですが、どうして聴き終わったらこうもキレイになれるんでしょうね?ホンマに不思議・・・。


別に今日が雛祭りだから女性指揮者を採りあげるわけではないので、あしからず(笑)。

女性指揮者ではシモーネ・ヤングに次ぐ出世頭だろうとしとらすが勝手に思っているアメリカの指揮者、マリン・オールソップ[http://www.marinalsop.com/]。2007年からボルティモア交響楽団の音楽監督に就任、その彼女の手兵と録音したバーンスタインのミサ曲が今年のグラミー賞にノミネートされてたんですが、あいにく今回は強力な大本命(MTTとSFSOのマラ8)がありましたから、ちょっとツイてなかったですね。
1月下旬に来日して読響定期を振ったようですが、反響も上々みたいでなによりです。京響に来てくれへんかなぁ~とか思ってるのですが・・・。ナクソスに数多く録音していて、グラミー賞のノミネートを機にいくつか聴いてみたんですが、いろいろあって採りあげるのが遅くなってしまいました。ホントはノミネート作のとか、あるいはバーバーやコープランドとかの方がよかったかもしれないんですが、スウィトナーのブラームスを聴いた後に試しに聴いてみたら意外とよかったので、アメリカの作曲家よりも馴染みのあるものにしてみました。
★ブラームス:交響曲全集/オールソップ&ロンドン・フィル【Naxos】
※注・セットでなく4枚分配です-1番
、2番
、3番
、4番
《収録曲》
→http://ml.naxos.jp/album/8.557428
・交響曲第1番ハ短調 Op.68
・悲劇的序曲 Op.81
・大学祝典序曲 Op.80
→http://ml.naxos.jp/album/8.557429
・交響曲第2番ニ長調 Op.73
・ハンガリー舞曲集~1,3,10,17,18,19,20,21番
→http://ml.naxos.jp/album/8.557430
・交響曲第3番ヘ長調 Op.90
・ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
→http://ml.naxos.jp/album/8.570233
・交響曲第4番ホ短調 Op.98
・ハンガリー舞曲集~2,4,5,6,7,8,9番
マリン・オールソップ指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
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★ホルスト 組曲『惑星』、セント・ポール組曲、ブルック・グリーン組曲
/ハンドリー&ロイヤル・フィル他【Musical Concepts】
《収録曲》
G.ホルスト
・組曲『惑星』 Op.32
・セント・ポール組曲 Op.29-2
・ブルック・グリーン組曲
女声合唱:アンブロジアン・シンガーズ(惑星)
指揮:ヴァーノン・ハンドリー(惑星、セント・ポール組曲)
バリー・ワーズワース(ブルック・グリーン組曲)
管弦楽:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団


→http://ml.naxos.jp/album/ALC1013
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この録音、何年か前に別レーベルでSACDが格安で出てたんですよね。輸入盤で1枚1,000円くらいでしたか?大型ショップや専門店などでワゴンセールで数百円で売ってたりもしてたとかどうとか。そのうち手に入るだろうと思ってタカをくくってたら、最近になって廃盤になったっぽいんですよね(苦笑)。マイナーなレーベルのは出合った時がチャンスよ、なんですよね、ホント・・・。
まぁ、SACDでなくCDとはいえ、このディスクもかなりお買い得な価格なんですが。
さて、愚痴はともかくとして、しとらす的には『惑星』はあんまりキンキンキラキラ華やかでスペクタクルな演奏は好みじゃないんですよね。占星術から着想を得てローマ神話とも結び付けられて作曲されたというだけではなく、民謡がモチーフのように思える旋律も随所に出てますし、なにより(「吹奏楽のための組曲」を知ってる人ならピンとくるでしょうけど)ホルストの真骨頂ってセント・ポール組曲のような音楽だと思うんですよ。素朴で温かい雰囲気に満ちていて。ですので、たとえオケが大編成であってもそうした側面を感じさせてくれる演奏の方が好みですし、この曲はそうあるべきだと考えてます。
『惑星』を初演したのは偉大な英国人指揮者だったサー・エイドリアン・ボールトですが、ヴァーノン・ハンドリーは若い頃にボールトのアシスタントをしていたそうです。師同様に自国の作曲家の作品を数多く指揮し録音も残してますが、そうした基盤の上にこの『惑星』の演奏はあります。「火星」「木星」「天王星」こそ荒馬に乗るかのようにダイナミックでブラスセクションがバリバリ鳴ってますが、やりすぎて下品になることがまったくありません。他の曲では素朴で繊細な美しさも感じられて、全体的にバランスのとれた格調ある演奏に仕上がってると思います。
2つ目のセント・ポール組曲は以前にも書いたようにしとらすの大好きな曲なのですが、こうやってポピュラーな『惑星』とカップリングされてるのがポイント高いですね。ホルストらしさがよく表れたセント・ポール組曲と一緒に聴くことで、『惑星』の真価が改めて認識できるかと思います。残念ながらハンドリーさんは一昨年の9月に78歳で亡くなられましたが、HMVのサイトに彼に関する特集記事が載ってますので目を通してみてください。
そして3つ目のブルック・グリーン組曲、これだけオケが同じでも別の指揮者による演奏になりますが、曲自体はセント・ポール組曲同様にホルストが音楽教師として亡くなるまで勤めていたセント・ポール女学校、そこの弦楽オーケストラのために書かれた作品だそうです。そのせいでしょうか、チャーミングでやさしさを滲ませた親しみやすい音楽になってます。


今日のN響アワーはスウィトナーさんの追悼特集でした。メインがブラームスの3番でしたので、せっかくですし手兵のシュターツカペレ・ベルリンとの録音に触れてみたいと思いますが、ドヴォルザークの全集と8枚組のセットになった廉価盤が出ていますので、併せて軽く触れておくこととします。
★ブラームス:交響曲全集、ドヴォルザーク:交響曲全集
/オトマール・スウィトナー指揮 シュターツカペレ・ベルリン【Berlin Classics】
《収録曲》
ブラームス:交響曲全集
・交響曲第1番ハ短調 op.68
・交響曲第2番二長調 op.73
・交響曲第3番ヘ長調 op.90
・交響曲第4番ホ短調 op.98
録音:1984-86年 ベルリン、キリスト教会[ステレオ]
ドヴォルザーク:交響曲全集
・交響曲第1番ハ短調 op.3『ズロニツェの鐘』
・交響曲第2番変ロ長調 op.4
・交響曲第3番変ホ長調 op.10
・交響曲第4番ニ短調 op.13
・交響曲第5番ヘ長調 op.76
・交響曲第6番ニ長調 op.60
・交響曲第7番ニ短調 op.70
・交響曲第8番ト長調 op.88
・交響曲第9番ホ短調 op.95『新世界より』
録音:1977-81年 ベルリン、キリスト教会[ステレオ]


・ブラームス全集→http://ml.naxos.jp/album/0013502BC
・ドヴォルザーク全集→http://ml.naxos.jp/album/0002782CCC
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第一印象は
「なんて温かいブラームスなんだろう」
響きも演奏もいわゆる木の温もりってやつでして。そして1番から4番まで通して聴いても全然聴き疲れしなくて、また最初から聴いてみようかなぁ~という気にさせられる演奏。ブラームスはあまり好んで聴く方じゃありませんので、こう思うのだけでも珍しいんですよ、しとらすにとっては。1・2番はともかく3・4番なんて気難しい一面が鼻につくこともありますし(苦笑)。
ブラームスの全集は手元にはカラヤンとベルリン・フィルのコンビのがありますが、確かにオケはめちゃ上手いし演奏もとにかくゴージャスで光り輝いているという感じで、大変優れたものだと思います。ですが4曲を1回通して、また繰り返して聴こうとまでは思わない。フルトヴェングラーも今は手元にないですが4曲とも聴いたことがあって、2番があの亡命直前のウィーン・フィルとのライヴ、1・3・4番は戦後のベルリン・フィルとのもの。で、彼のブラームスってこれだけが他よりも突出して超越しているのと、全てにおいて完璧でかつ表現の起伏が激しいのと。さらに2番のライヴが顕著ですが、もう神懸っているとすら思えるほどですよね。スピーカーの前に襟を正して跪くしかないような・・・。
同じ独墺系でもスウィトナーさんのはまたタイプが違って、木の温もりと人の温かみを感じるもの。だからといって、決してヌルくはないんですよね。時に厳しさも垣間見せますし、2番の終楽章ではラストに向かってアッチェレランドで畳み掛けていく(オケが速さに追いつけなくなりかけるほど)など情熱的で激しい部分もしばしば見られます。だから退屈しないでアっという間に聴き終えてしまうんでしょうね。N響アワーで放送されたものよりも数年前の録音ですが、演奏自体は随分と練りこまれたものなのに年齢的にはかなり若いようにも感じました。
さて、ドヴォルザークの方はというと、全曲通して聴いたのはこれが初めてでした。しとらすが個人的に好きな8番はともかく、初期のなんてまず食指が動きませんし(をい)。それで感想はというと、ボヘミアの薫りこそありませんが、それ以外に交響曲に必要なものはキチンと揃ってます、というところでしょうか。ドイツらしくカチッとした印象ですね。“ボヘミアの薫り”の有無をどう捉えるかだと思いますが、しとらすからしたら8番はちょっとドライに感じたかも。でもだからこそドヴォルザークの交響曲作品の素の部分を見るという点ではいいのではないでしょうか。


追悼という意味ではもっと相応しい選曲があるのでしょうけど、しとらすが個人的にスウィトナーさんの凄さを再認識させられたという点で、このディスクを採りあげてみました。
★モーツァルト 交響曲第35・36・38番
/オトマール・スウィトナー指揮 シュターツカペレ・ドレスデン【Berlin Classics】
《収録曲》
W.A.モーツァルト
・交響曲第35番ニ長調 K.385『ハフナー』
・交響曲第36番ハ長調 K.425『リンツ』
・交響曲第38番ニ長調 K.504『プラハ』

→http://ml.naxos.jp/album/0094752BC
※今回は単発モノで採りあげましたが、スウィトナーさんはシュターツカペレ・ドレスデンとモーツァルトの交響曲29~41番まで録音していて、そのどれもがハズレ無しの名演奏揃いですので、下記に挙げる格安のBOXを買った方がお買い得感もあって幸せになれると思います。
左が『スイトナー&シュターツカペレ・ドレスデンBOX(10CD)
』、右が『交響曲集、管弦楽曲集(6CD)
』、もちろん収録曲数は左の方が多いですが、なぜか安いのも左の方です(笑)。



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スウィトナーさんは1964年から1990年まで20年以上にわたってベルリン国立歌劇場のGMDでしたので、どうしてもベルリン国立歌劇場やシュターツカペレ・ベルリンとの演奏の方に目が行きがちなのですが、ベルリンに来る前は4年ほどシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を務めていたようです。そのシュターツカペレ・ドレスデンとのモーツァルトの交響曲・管弦楽曲集の一連の録音は在任中から退任後の’70年代半ばまで長きにわたってますが、『ハフナー』『リンツ』『プラハ』の録音は3曲とも1968年、46歳の頃のこと。
しとらすはここのページを見てずっとこの録音のことを気になってて、ちょうどNMLに収録されているのを見かけたので聴いてみたのですが、『ハフナー』の第1楽章で演奏の素晴らしさに早々とノックアウトされました。軽快なリズム、新鮮さと活気に満ち溢れた躍動感。400年の伝統を誇るオケを振ってるとは思えないほどけっこう尖った印象もあるのですが、それでいて肌理細やかさやデリケートさが損なわれることがないというのは恐れ入るしかありません。
もともと3曲とも長調で初心者でも気軽に聴ける感じの曲ではあるのですが(それでいて奥の深さも感じるのがモーツァルトの恐ろしいところでもあるのですが)、スウィトナー&シュターツカペレ・ドレスデンのは特に最初から最後までワクワクドキドキしっ放し、気がついたらあっという間に3曲聴き終わってました、といった印象の演奏です。ともかく楽しめます。そして聴き重ねる毎にいろんなことに気づかされるのではないでしょうか。
スウィトナーさん、ありがとう!
そして、どうぞ天国で安らかに・・・。

