杉田 敦/白い街へ~リスボン、路の果てるところ

杉田 敦『白い街へ~リスボン、路の果てるところ』【彩流社、2002年刊】

《内容》
白く輝く街、リスボンに魅せられたアーティストたち。ペソア、タブッキ、ヴェンダース、ベンヤミン、カエターノ・ヴェローゾ、アルヴァロ・シザ…異分野の表現者とリスボンを重ね合わせる文化紀行。著者が撮りためてきたモノクロ写真を掲載。
〈目次〉
1 影たちの気配のなかで―フェルナンド・ペソアとその異名たち
2 寄る辺なさへ―アラン・タネール、あるいはポールという空白
3 誰のものでもない白い街―アントニオ・タブッキの不安、あるいは異名という引力圏
4 コラソン・ヴァガボンド―カエターノ・ヴェローゾ、漂泊する心
5 屋根の上の自転車乗り―ルイス・ロウロ、リスボンの神経質と破天荒
6 キッチンの喧騒―イリヤ・カバコフのポリフォニーとディアスポラ
7 暗い光、明るい影―ヴェンダース、マドレデウス、そして…
8 頭のない十字架―アルヴァロ・シザ・ヴィエイラという人間主義
9 路の果てるところ…―ヴァルター・ベンヤミンのリスボン
10 帰路につけないもののために…―あるいは、世界のどうしようもない寄る辺なさのために

長崎っ子の性?なのか欧州で1番行きたい所と聞かれれば“ポルトガル”と答えてしまう私が特に気に入ってるポルトガル本です(こちらで紹介したファドのCDを聴きながら読むと気分はリスボン?)。
リスボンの街を歩けばそこかしこで目にする眺め・・・白い壁の建物・エレクトリコ(市電)・細い路地・テージョ川河口・・・などの風景を、文学・映画・音楽・建築・現代思想などで活躍した人々の話題と絡ませながら描いています。
リスボンの“光”と“白い影”を、フェルナンド・ペソア、アントニオ・タブッキ、カエターノ・ヴェローゾ、アルヴァロ・シザ、ヴァルター・ベンヤミンらを登場させながら、ポルトガル語のサウダージとはまたちょっと違った幻想的ですらある雰囲気の中で淡々と表現しています。良いところばかりを見せようとしているわけでは決してないのですが、いつの間にかリスボンの独特の雰囲気に魅せられるようで、興味深い紀行文だと思います。