例年なら出かけない京響のニューイヤーなのですが、今年はスイス・ロマンド管弦楽団[http://www.osr.ch/]の首席客演指揮者に就任したばかりの山田和樹さん(スイス・ロマンド管のサイトにある首席客演指揮者としてのプロフィールはココをクリックのこと。
ちなみにこのオケのあるジュネーヴはフランス語圏なので記事も仏語です)の指揮による定期並みのプログラムだったので、彼の実力や個性を知る格好の機会と思い、チケットを買って出かけることにしました。
京都市交響楽団 特別演奏会「ニューイヤーコンサート」
2013年1月12日(土)14時30分開演@京都コンサートホール
◆L.v.ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番変ホ長調『皇帝』 Op.125
(休憩)
◆F.ディーリアス 『小管弦楽のための2つの小品』〜「春を告げるかっこう」
◆F.シューマン 交響曲第1番変ロ長調『春』Op.38
(アンコール)
◇B.ブリテン シンプル・シンフォニー Op.20〜第2楽章“遊び好きのピチカート”
指揮:山田和樹
ピアノ:仲道郁代
コンサートマスター:渡邊 穣
天気はそこそことはいえ、まぁ寒いこと寒いこと。
北山だから尚のことなんですが、雨や雪が降らなかっただけまだマシでした。
チケットは前売完売だったそうですが、それでも7〜8割程度しか客席が埋まってなかったのは寒すぎたせいだったかも・・・?
ステージに登場してきた団員の皆さん、女性の方はそれぞれにカラフルにドレスアップした衣装で華やかな感じでした。
ニューイヤーではいつもこういった趣向なのでしょうか?
コントラバス副首席の石丸さんだけが洋装でなく袴姿の和装でしたが、いかにも京都らしくて良かったですね。
袖の長い衣装は演奏に支障をきたすでしょうから女性の和装は演奏会では難しいと思いますが・・・。
閑話休題。
まずは前半・・・ですが、しとらす的には全然期待してなかったので、まぁこんなものなのかなという無難な演奏。ショパン弾くみたいに『皇帝』やられてもなぁ・・・とは思いましたが、オケの伴奏もそれに合わせてか控えめなサポートに徹している印象でした。
ただ、演奏以前に感心したことが1つ。
オケのチューニングも終わって指揮者とソリストが登場し、さぁこれからとばかりに山田さんがタクトを構えた瞬間にL側よりのP席付近からガサゴソ大きな音を出した大馬鹿野郎がいて、
「このタイミングで馬鹿者がぁー!(怒)」
と私が思ったのとほぼ同時に山田さんがスッとタクトを下ろしたこと。
最悪のタイミングでノイズを出した大馬鹿者がどこにいるのかを確認するよりも、こういった事態にマエストロがそういった反応をとるのかに興味があって、私はノイズの出処よりもずっとステージの方を見てたのですが、音が鳴り止んで静寂が戻るまで山田さんはノイズの方向を見ることもほとんどなくじっと俯きかげんの姿勢で待っていて、十数秒後だったか、ノイズが止んでから仲道さんとアイコンタクトして改めてタクトを構えて曲を振りはじめてました。
瞬時に反応と判断をして指揮棒を下ろしたのはプロの音楽家らしい耳の良さもさることながら判断力・決断力もなかなかだと思いましたし、その後のリアクションが冷静かつエレガントに感じて好印象でした。
後半、1曲めはディーリアスの「春を告げるかっこう」。
5分前後の小品にもかかわらず、出だしから響いてくるサウンドが前半とはガラッと違って、なにかこうノビノビとして何かから解き放たれたような感じに。
あぁ〜、やっぱり前半は窮屈だったのかと思わず笑ってしまいそうになりましたw
短い曲ですけどちゃんと作品の雰囲気に合わせくるように詰めがしっかりしていた印象で、美しい旋律を耳に心地よく聴かせる演奏でした。
そしてメインのシューマンの1番。
ニューイヤーと名のつくコンサートではウィンナワルツやポルカでプログラムを埋めることがほとんどで、いくら標題に“春”が付いてるからって扱いを一歩間違えると野暮ったさが目立ってしまいそうな曲をメインとしてチョイスしてくるのには相応の意気込みがあったと思うのですが、実際に京響と奏でてきた音楽は自信に満ち溢れていてさすがというものでした。
全体的にはオーソドックスながらも上品で爽やかな感じ、両端楽章では品の良い華やかさで快活に、中間の2つの楽章でもスッキリと整理されてて厚ぼったさをまったく覗かせない処理で、終楽章でのコーダ(Poco a poco accelerando)に入ってからの疾走感がいかにも若さを感じる畳み込むような(それでいて乱れないギリギリのラインでしっかりコントロールしている)流れがピッタリとハマっていて、とても素晴らしかったです。
ベートーヴェンやブラームス、そしてスコアにやたら指示書きの多いマーラーならまだしも、アピールの難しいシューマンのシンフォニーで期待以上の演奏を聴かせてくれるとは、さすがはスイス・ロマンド管から首席客演指揮者に指名されるだけはあると思いました。
何度かのカーテンコールのあとに山田さんが指揮台に立って客席を制するジェスチャーをして、彼と団員たちから
「あけましておめでとうございます」
の掛け声。そして、
「ウィーン風ならワルツでしょうけど今年はブリテンの生誕100周年でもあるので、その中で可愛らしい曲を」
といった趣旨の挨拶をしてからアンコールに演奏したのは、ブリテンのシンプル・シンフォニーから第2楽章。
いやもう、指揮ぶりと京響から引き出した演奏もよかったですけど、後半のディーリアス→シューマンの『春』→ブリテンという渋い選曲、そのチャレンジスピリッツも大いに気に入りました。
2012-13シーズンのスイス・ロマンド管の定期には昨年11月に武満徹とジェイムズ・マクミランとベートーヴェン『英雄』のプログラムでデビューした他に、2月20日には
・アンドレ・ジョリヴェ:トランペットと弦楽、ピアノのための小協奏曲
・ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調 Op.35
・バルトーク:舞踏組曲 Sz.77
・ストラヴィンスキー:バレエ『ペトルーシュカ』(1911年版)
というオール20世紀前半プログラムで、そして5月8日には
・フォーレ:レクィエム Op.48
・ラヴェル:バレエ『ダフニスとクロエ』
という、しとらすてきにはとても豪華な組み合わせのプログラム。
ジュネーヴまで聴きに行く金なんてねーぞ!?おい(爆)。
ちなみに“Série Symphonie”と名付けられた演奏会がシーズンで8回用意されてあるのですが、その内3回が彼の担当です(他はヤルヴィ父、ビシュコフ、シフ、ヤノフスキ、アラン・アルティノグル)。今季残りの2回の演奏会もぜひ成功させてほしいものですね。
・・・つーか、ネットラジとかなんかで聴く方法ないですか?なんとかググって探してみますけど、ご存じの方がいらしたらぜひ教えて下さい。マジでお願いします。
m(_ _)m