メンデルスゾーンの代表作とされる作品70のオラトリオ『エリヤ』。かつてヴォルフガング・サヴァリッシュさんがNHK交響楽団の記念すべき第1000回定期演奏会でこの曲を採り上げた時には私は吹奏楽部員として高校生活を送っていた頃でしたが、ドイツのマエストロがN響の節目となる回にこの曲を採り上げた事実は記憶していても、演奏をFMのエアチェック等で聴いたかどうかまでは定かでなく、若い頃は宗教音楽に関心も持ってなかったので、記憶も遥か彼方へ・・・だったのですが、今やアラフォー(苦笑)になって宗教音楽の良さと重要性が少しは理解できるようになったと、京響がこの曲を演奏する機会を見過ごすなんてもったいないことはできず、ましてや指揮は広上さん。合唱はいかにも素人集団のようだという不安はありましたけど、この曲を生で聴く機会などそうそうないとも思ったので、行ってみることにしたのですが・・・
・・・なんであの甲高フラブラオヤジまで来てたんかなー(怒)・・・
・・・ツイてねぇ・・・(とほほ)
京都混声合唱団・びわこアーベントロート合唱団 合同演奏会
2013年11月3日(日)14時開演@京都コンサートホール
◆F・メンデルスゾーン オラトリオ『エリヤ』 Op.70
(第1部と第2部の間に休憩あり)
指揮:広上淳一
管弦楽:京都市交響楽団
コンサートマスター:渡邊 穣
合唱:京都混声合唱団、びわこアーベントロート合唱団
エリヤ:小玉 晃(バス)
オバデヤ&アハブ:谷内公一(テノール)
ソプラノ:谷村由美子
アルト:福原寿美枝
当日は全席自由だったので、会場にはかなり早くに行って、できるだけベストなポジションを・・・と思って前目の方に席を取りましたが、ステージを見ると思ったよりも弦セクションの数が少ない?
『エリヤ』は管セクションと打楽器、声楽ソロには人数を指定していますが、弦楽器にまで指定はなかったはず。それが定期でモーツァルトやった時よりも少なそうに見えました。その弦セクションの今回の編成は 10-10-8-6-4。コンマスは渡邊さんで隣が尾崎さん、泉原さんは今回は降り番でした。管楽器も首席が出ていたのはクラリネットの小谷口さんとトランペットのナエスさんだけ(ちなみにTp2番は稲垣さん)で、オーボエ1番はシャレールさん。
ずいぶん少ないなぁ・・・と始める前は思っていたのですが、イザはじまってみるとナルホドな、と。要は2つの合唱団、頭数だけは大勢揃っているのですが、音程と縦の線を合わせるのに汲々といった感じで、ドイツ語の発音は目をつむれるにしてもダイナミックレンジと表現の幅がとても狭く、声が遠くに届くようなハーモニーまでできてないんですね。私は京コンの音響を考慮して3階の前の席をゲットしたのですが、それでも合唱のパワー不足を感じたので、後ろの方の席の人は第1部と第2部のエンディングにそれぞれ用意されているクライマックスでどれだけ音が聴こえてたのやら・・・?
そんな様子でしたからオケと4人の声楽ソリスト以外はぶっちゃけほとんどシロートのお遊戯会レベル(苦笑)。しかも前日に同じホールでパリ管の公演があったばかりので全体練習にどれだけ時間が取れていたかも疑問で、それでも演奏後にはジワッとこみ上げるものを感じさせてくれたあたりがメンデルスゾーンの代表作と言われる所以であり、また広上&京響(面子的には定期と違って1.5軍ってところでしたけど)の底力だと感心させられました。2つの合唱団があんなだからバランスとって弦楽器の編成を削ったのでしょうけど、それでも薄いとは思えなかったですしね(一昔前ならありえない・・・それだけこの数年で響きに厚みが増してきた証左)。広上さんも限られた準備の中で音楽作りに大変だったでしょうけど、本番でも交通整理で手一杯のはずなのになんとか皆をまとめあげて可能なかぎりパッションを引き出したのはさすがだと思いました。
9月の“京都の秋”開幕でやった『展覧会の絵』や数年前に定期でやったエニグマ変奏曲のように各章ごとの切れ目が曖昧な組曲モノでは聴いていてなぜがブツ切り感が引っかかってしまう傾向のある広上さんですけど、今回の『エリヤ』ではそういった欠点が解消されていたのも好印象でした。ソリスト陣ではやはりエリヤを担当した小玉さんが際立っていましたね。
あと、演奏には直接関係ないのですが、今回の演奏会では字幕表示に2台の大型テレビ(あれ液晶かな?そこまでわかりませんでしたけど)をステージ両脇に配置して、歌に合わせて日本語訳を表示するに終わらず、声楽で複数のパートが重なる時には「第8番 ○○ △△ □□」と先に表示しておいて歌い手ごとに文字を色分けしてどのパートがどういった内容の歌詞を歌っているのかわかりやすく表示していたり、オケ伴奏だけの時は該当する旧約聖書のエピソードにちなんだものか、それらしき絵画の画像を表示していたりと、プレゼンテーションソフトか何かで作成したっぽい字幕表示のようでしたけど、あれはとても良い工夫だったと思います。悪い点では第2部の第34番→第35番の時に女声四重奏のために後方の合唱隊から3人の女声がステージ前まで出てきた際にヒールをかつかつ音を立てて歩いてたのとそれだけ時間が妙に空いてしまったことで少し興醒めしてしまったことがありましたが、他にも小さな不手際があったように思います。本番前に同じ会場でリハーサルを時間をとってやっていれば修正できたでしょうけど、今回はホールの事情と舞台慣れしていない人たちが多かったことで、細かい配慮まで気が回らなかったのでしょうね。
ともあれ、半分シロートお遊戯会みたいなものとはいえ、こうして生でメンデルスゾーンの『エリヤ』を聴く機会を得られてよかったですし、まぁ合唱には目を瞑るにしても広上&京響コンビと小玉さんの熱唱でこの曲の素晴らしさも感じさせてもらいました。え〜、あぁ・・・うん、だからこそ、『エリヤ』はやっぱり定期で採り上げるべきだな(笑)。