広上さんの後釜には海外在住の方と交渉中ということで後任の発表が先延ばしされていた(まさかサドユタカなら最悪だなとヤキモキさせられていた)京都市交響楽団[https://www.kyoto-symphony.jp/]の常任指揮者人事でしたが、7月12日、意表を突く時期に発表されましたね。
【新常任指揮者就任のお知らせ】
「沖澤 のどか」氏の京都市交響楽団 第14代常任指揮者就任が決定しました。
(期間:2023年4月1日~2026年3月31日)詳細は京響HPをご覧ください。https://t.co/o1uyVjJAt6 pic.twitter.com/Um5XKEl548
— 京都市交響楽団 City of Kyoto Symphony Orchestra (@kyotosymphony) July 12, 2022
マエストロ沖澤より、コメントをいただきました。
来年度からの京響に、どうぞご期待ください!演奏会でお待ちしております! pic.twitter.com/SC6ud3c7KY— 京都市交響楽団 City of Kyoto Symphony Orchestra (@kyotosymphony) July 12, 2022
海外のクラシック音楽ニュースを積極的に紹介しているウェブサイトやブログでも記事に採り上げられていたのにはちょっと驚きました。京響と沖澤のどか[https://www.nodokaokisawa.com/]にそれだけのニュースバリューがあるということでしょうか?
◆京都発=京都市響の第14代常任指揮者に沖澤のどか【月間音楽祭 2022年7月13日】
京都市交響楽団(City of Kyoto Symphony Orchestra)が12日、第14代常任指揮者に沖澤のどかを迎えると発表した。2008年4月から2022年3月までその任にあった広上淳一の後任で、女性指揮者の就任は初めて。任期は2023年4月1日から3年間。
沖澤は1987年、青森県三沢市生まれの35歳。チェロやオーボエを学び、東京芸術大学、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で学び、2018年の東京国際音楽コンクールの指揮部門で女性として初の第1位を獲得。翌2019年にはフランスのブザンソン国際指揮者コンクールで優勝している。
現在、ベルリンを拠点に精力的に音楽活動を展開しており、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のアシスタント・コンダクター。この3月にはキリル・ペトレンコの代役として、ドイツ連邦大統領官邸で開かれたウクライナとの連帯を示すオーケストラの演奏会を指揮して話題をさらった。
京都市交響楽団へのデビューは2021年10月で、ラベルの組曲《ダフニスとクロエ》の第1番、第2番などを指揮している。
ブザンソンの優勝者ということに注目が集まりがちですが、欧州の楽壇で重要なのは誰のところで如何なる修行を積んだのか?ということだと考えてます。その点、沖澤さんは2020年からベルリン・フィルでキリル・ペトレンコの助手を務めていて、今年3月のドイツ連邦大統領官邸とベルリン・フィルが主催したウクライナへの連帯を示す演奏会で、急病で指揮をキャンセルしたペトレンコに代わってタクトを振ったそうとのこと。文化的というよりも政治的に重要なイベントを代役とはいえ任されたことは、それなりに実力を認められているのでしょう。
キリル・ペトレンコの薫陶を受けた門下生の中には、バイロイト音楽祭史上初の女性指揮者として昨年『さまよえるオランダ人』を指揮して音楽面で高評価を得たウクライナ人のオクサーナ・リーニフ Oksana Lyniv [https://oksanalyniv.com/]がいますが(彼女の場合は2013−17年にバイエルン州立歌劇場でペトレンコの下でアシスタント・コンダクターを務めていて、彼がバイロイトで『ニーベルングの指環』を指揮した際にも助手として一緒に仕事してた)、リーニフは今年も引き続きバイロイトで『さまよえるオランダ人』を担当するだけでなく、今年1月からミケーレ・マリオッティの後任としてイタリアのボローニャ市立歌劇場の音楽監督に就任しています(スカラ座などイタリアの有名どころの歌劇場で女性がGMDになったのは初めてとか)。
京響が若手の、しかも女性の指揮者を常任に登用するとは予想外の人事ですが、同じキリル・ペトレンコ門下生の姉弟子リーニフに倣って、沖澤さんも京響とともに更なる上昇を遂げて世界へ大いに羽ばたいてほしいと期待します。