京都市交響楽団 第485回定期演奏会(指揮:岩城宏之)――岩城宏之 conduct オール武満プログラム

今年は武満徹さんの没後10周年にあたるので(1996年2月20日に亡くなられてますから今日がちょうど2日違い)、岩城さんも思い切ってオール武満プロを組まれたようです。
曲ごとにオケの配置が替わるので、その都度幕間の時間繋ぎがてら岩城さんのトークがあったのですが、プログラムに解説を書いた人に向かって、まぁ文句を言うこと言うこと(爆)。
岩城節炸裂なのですが、悪いのはちゃんと調べないまま書いた方にあると思うので仕方ないですね。
生前の武満さんと深い親交があり作品も積極的に内外で採り上げてきた岩城さんから見れば穴だらけだったんでしょう。

私はそれほど武満作品に親しんでるわけではないですが、エッセイでもたまに見かける毒舌を生で聞けてよかったです(笑)。

その彼曰く
「今日は初期・中期・後期から曲目を選んでみました」
とのことですので、曲名の後に作曲年代も記してみました。

ちなみに『夢窓』は京響初演だそうです。
京都信用金庫が創立60周年を記念して3人の作曲家に「京都」をテーマに新作を委嘱したのだそうで、武満さんの『夢窓』の他はトリスタン・ミュライユ『シヤージュ(航跡)』とマリー・シェーファー『香を聞く』。
この3曲を『交響的三部作“京都”』として小澤征爾さん指揮!の京響が1985年9月9日に京都会館で世界初演したそうで・・・
へぇ~へぇ~へぇ~(なんかメチャ凄い!)
翌日には東京の昭和女子大学人見記念講堂でも演奏され、このとき録音もなされてレコード化されたらしいのですが・・・
・・・今じゃ手に入りっこないわな・・・

 

京都市交響楽団 第485回定期演奏会
2006年2月18日(土)18時開演@京都コンサートホール
◆武満徹 弦楽のためのレクイエム [1957]
◆武満徹 ノヴェンバー・ステップス [1967]
(休憩)
◆武満徹 夢時(Dreamtime ゆめとき) [1981]
◆武満徹 夢窓 [1985]
(休憩)
◆「系図」~若い人たちのための音楽詩~ [1992]
  〔※岩城宏之による室内オーケストラ向け編曲版〕
指揮:岩城宏之
コンサートマスター:工藤千博
尺八:三橋貴風(ノヴェンバー・ステップス)
琵琶:首藤久美子(〃)
ギター:佐藤紀雄(夢窓)
ナレーター:吉行和子(「系図」)
アコーディオン:山岡秀明(〃)

 

没後10年でも定期でこうしたプログラムを組んでくれるオケは少なくとも関西では他にありませんので(特に大フィルなんて絶対にやらないだろうな・・・)、とてもありがたいチョイスでした。
『弦楽のためのレクイエム』や『ノヴェンバー・ステップス』あたりはFMとかで聴いたことはあるのですが生では初めてでしたし、京響のサウンドの特性がわりと邦人作品に向いているのと岩城さんが武満作品を得意にしているのと相まって、生で味わう“タケミツ・トーン”を存分に堪能できましたし、どれもいい演奏でした。

・・・うん、4曲目までは・・・

最後の「系図」(オリジナルはニューヨーク・フィル創立150周年委嘱作品で大編成オケ用なんですが、詩の雰囲気に合わせたいからと武満さんの死後に岩城さんが武満夫人の了解をとって小編成オケ向けに編曲したとか)、谷川俊太郎さんの『はだか』という詩集の中から武満さんが

1.むかしむかし
2.おじいちゃん
3.おばあちゃん
4.おとうさん
5.おかあさん
6.とおく

という6篇の詩を選んで曲をつけたんだそうです。
詩は歌うのではなく朗読されるようになってて、いずれも家族をモチーフにした少女の1人称で書かれた詩のためか、武満さん自身は「12歳から15歳の少女による朗読」とされたようなのですが、今日の朗読はお母さん世代どころかおばあちゃん世代?にあたる女優の吉行和子さんでした(実際の演奏会でも大人の女性が務めることが多いそうですね)。
で、女の子の語りという設定ですので詩自体が平易な言葉遣いで書かれてますし、曲もそれに合わせてか旋律など親しみやすい曲調になっているのですが・・・
・・・なんなんですか、このどこか哀愁が漂っててひたすらに美しいのは・・・
・・・曲が半分もいかないうちから涙が出てきて止まりませんでしたよ・・・。
吉行さんの朗読も京響の演奏も、何故こうも泣かせてくれるんだか・・・。
これ以外に感想なんて書けません。

そんなわけで、一生に1度あるか無いかの、大変に貴重な体験をさせていただきました。
岩城さんと吉行さんと京響のみなさん、本当にありがとうございました。
m(_ _)m