京都市交響楽団 第505回定期演奏会
2007年10月12日(金)19時開演@京都コンサートホール(大ホール)
◆J.S.バッハ(レスピーギ編) パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582
◆L.v.ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58
※ピアノ・ソロ アンコール
◇F.ショパン 24の前奏曲op.28~第3番&第7番
(休憩)
◆C.フランク 交響曲ニ短調
指揮:下野竜也
ピアノ:小菅 優
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
どうにも今まで下野さんとは巡り合わせが悪くって、今夜がようやく初体験?となり、初めて見た下野さん・・・燕尾服よりも化粧まわしが似合いそうな見事なアンコ型(爆)。
本人が以前やってたブログで体型のことをちょっと気にしてるような書き込みを見た記憶があるのですが、まぁ想像通りと言いますか・・・(もごもご)。
年を取ったらサンティさんのようにお腹で指揮するんかいな、などと本人にとても失礼なことを考えてたり(笑)。
でも、私と下野さんて同い歳なんですよね。
生まれが(西と南の違いはあれど)九州というのも同じ。
なので彼には特にエールを送りたい気持ちが強いです。
昨年晴れて読響の正指揮者に就任しましたし(大フィルがキープしときゃぁよかったのに読響に取られて後できっと後悔するぞ)、スクロヴァチェフスキさん共々頑張ってほしいですね。
それから、弦の配置が左から1stVn、2ndVn、ヴィオラ、チェロの順でヴィオラとチェロが通常と逆。
これは大山平一郎さんと同じ配置ですが、大フィルでもそうなのでしょうか?
見たことないのでわかりませんが・・・。
さて、1曲目はレスピーギがアレンジしたバッハ。
レスピーギは『リュートのための古風な舞曲とアリア』のように(他の作曲家の曲の)アレンジものの作品も多くって、バッハの他にはヴィヴァルディやフレスコバルディにロッシーニやラフマニノフなんてのもあります。
今回下野さんが採りあげたバッハのは私は初めて聴きましたが、2001年のプロムス・ラストナイトでもやってるんですね(スラットキン指揮BBC響)。
CDあんのかいな、思ったらありました。ピエール・モントゥーがサンフランシスコ響と録音したベートーヴェンの4番と8番にカップリングで入ってるものです(私は未聴)。
さて、そのレスピーギ編曲のバッハ、ステージを見るとまぁ人=楽員の多いこと。
しっかり4管編成ってさすがレスピーギ(笑)。
聴いた感じは『リュートのための古風な舞曲とアリア』を聴いたことがある方ならすぐピンときそうな、響きというか雰囲気が似てるでしょうか。
レスピーギらしいオーケストレーションですので、あんまりバッハという気がしない(笑)。
ちょっと冗長すぎる部分もありましたが、それなりに楽しめました。
次は小菅さんの登場。6月に神戸で大植&大フィルと共演した時は2番でしたが、この時同様に素晴らしいピアノでした。
テクニックが抜群とか音色がとても美しくて透明感があって多彩だとか表現の幅が広いとかもあるのですが、やわらかくも所々エッジの効いた小気味よい演奏で何より構築がカチッとしてて、重厚さやパワーで押すわけでもないのにヤワなところが全くなく、細くて粘性の高い鋼が入っているかのよう(我ながら変な喩え・苦笑)。
コンチェルトの2番と4番を聴いた印象でもベートーヴェンがかなり合ってそうな気がしました。
今度はリサイタルでソナタをぜひ聴いてみたいですね。
後期の作品をどう弾くのかとても興味がありますが、関西で聴く機会があるかしら・・・?
それと神戸での大フィルの時も思ったのですが、自分が弾いてない場面でオケの方(指揮者だけではなく)を見てることがわりと多いような気がしましたが、オケとの対話を楽しんでいる様子で、この点も好感が持てますね。
(ちなみに私は気付かなかったのですが後半のフランクも客席で聴いていたらしいです。)
観客と楽員から熱い拍手を送られて、アンコールにショパンのプレリュードから2曲。
ベートーヴェンでああいった演奏を聴いてしまうと小菅さんのショパンってイメージが沸きにくいのですが、やるとしたら形式感のしっかりしたプレリュードあたりでしょうか?
ちなみに、アンコールの時に下野さんは2ndVnの後のハープが置いてあるひな壇にちょこんと座ってご観賞。背が低いから1階席にいた人からは見えなかっただろうな(笑)。
オケの伴奏もよかったです。
どことなく室内楽のような印象の演奏でしたが、京響でベートーヴェンをやるならボッセさんのようにゼロから‘ドイツ仕込み’を叩き込むか、そうでなければ今回のように室内楽的に鳴らすようなアプローチでやった方がいいのかもしれませんね。
そして後半、メインはフランクのシンフォニー。
生で聴くのは2回目、阪哲朗さんが大フィル定期で指揮して以来。
あの時はどこか散漫な印象であまりいいとは思えませんでしたが、それでもこの曲は京響よりは大フィル向きでしょうし、下野さんはこの手の曲は得意そうでも果たして大丈夫かいな、とやや心配していたのですが、要らぬ心配をして損しました(笑)。
よくドイツ風とも言われる曲なわけですが、その‘ドイツ風’を表に出すのではなく、明晰かつ明朗、といった感じで京響の特性を上手くこの曲に合わせて充分に良さを引き出していたように見えました。
とてもキビキビした指揮ぶりで、オケにやや重厚さが欠ける分を響きの純度と推進力で補って余りあるような演奏でしたし、終楽章もクライマックスに向けて快活に突き進むといった趣きで、とても盛り上がって終わりました。
全体の見通しがよくて尚且つ細部にもきちんと目が行き届いていて、音楽に引き込まれている内に気がついたらエンディング・・・アンコールで終楽章だけでももう1度やってほしかったような(笑)。
首席が揃い踏みの木管のソロはいつも通り安定感のある好演でしたが、今日はコーラングレを担当したシャレールさんがまた素晴らしかったです(考えてみたらシャレールさんにとってフランクは同じ音楽院の大先輩ですね)。
演奏が終わって下野さんが真っ先にシャレールさんに拍手を受けさせていたのも納得ですね。
楽器を持った右手で軽くガッツポーズをしてる・・・ように見えたのは気のせいかな?
本人も会心の演奏だったと思います。
あと金管も気持ちよく音を響かせてましたし、弦も美しい響きを終始しっかりと保っていて文句なしにグッド。
予想外にいい(この曲とは相性がさほどよくないように思えたので)演奏に出くわして、とても得した気分になりました。
京響の能力の高さを改めて感じさせられたように思いますし、京響からこれだけのフランクの交響曲の演奏を引き出した下野さんにも、もちろんブラボーです。
下野さんには観客からだけではなく楽員からも熱い拍手が送られていて、ニキティンさんが気を利かせて指揮台に立たせて拍手を受けさせようとしてたのですが、下野さんは遠慮してましたし、オケを立たせると自分はサッサと引っ込んじゃうし(笑)。定期には初登場でしたがオケとの関係もとても良好のように見受けられましたので、ぜひまた呼んでほしいですね。