京都市交響楽団 第506回定期演奏会
2007年11月7日(水)19時開演@京都コンサートホール(大ホール)
◆S.ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番二短調op.30
(休憩)
◆E.エルガー 交響曲第2番変ホ長調op.63
指揮:大友直人
ピアノ:小山実稚恵
コンサートマスター:渡邊 穣
1番を演奏してから約1ヶ月半。
エルガー・イヤーということもありますが、定期で短期間に1・2番を並べられるのは大友さんならではかもしれません。
今夜は前半に小山さんも登場するのですが、2階席中央とか空席が目立ってたのは残念です。
3日前のパリ管は満員だったらしいのですが、いくらソリストが諏訪内さんだからって、1万ン千円払ってパリ管でチャイコン聴くくらいなら少しはコッチ(今日の京響定期)に来ぃや、とボヤきたくなります。
余談ですが、パリ管の音楽監督が2010年からパーヴォ・ヤルヴィになるそうですね。
閑話休題
前半はラフ3。エルガーの前にラフマニノフってどうなの?という気がしないでもないですが、ソリストが小山さんなのでまぁいっか(笑)。
秋にピッタリなワインレッドのドレスでご登場。
こうした衣装の選択は大人の女性だよなぁ・・・と思いましたが、奏でる音楽は予想に反してかなり激しく情熱的。
でも‘予想に反して’というのは私が彼女の録音
を聴いてなかったからで、Amazonのカスタマーレビューを見ると「張りつめた緊張感(中略)豪快というかすさまじいというか」という感想がありますので、これが“小山実稚恵のラフ3”なのでしょう。
とにかく凄かったです。
第1楽章のカデンツァであまりの緊迫感に会場全体が呑まれてしまったかのようにシーンと静まり返ってしまい、いつもいつも行儀の悪いジジババ連中ですら物音1つたてられなかった(笑)くらいでしたし、終楽章もテンポや強弱で緩急を際立たせて大きなスケール感を出していたりなど、終始全身全霊を込めた素晴らしいピアノでした。
バックの京響もかなり頑張っていたのですが、それでもちょっと‘お姫様’に思えるほど。
当然ながら演奏後には熱い拍手が観客と団員から送られていました。
さて、後半はエルガーの2番。
6月に関西フィルが湯浅卓雄さんの指揮で採りあげた時の演奏もなかなかよかったですが、どこかしら「まだ一寸こなれてないなぁ・・・」という印象も拭えなくて、やっぱりこの曲を演奏するならオケもエルガーで場数を踏んでないといけないのかな?と思ったものでした。
それ以来、今回の定期をとても楽しみにしていたのですが、こちらは期待‘以上’。
さすがです。
なにより一番驚かされたのが弦、特にヴァイオリンの音色の多彩さ。
切なさ・寂しさ・悲しみ・・・人間の感情(しかもマイナスの側面を持つ感情)を表すこれらの言葉、言葉は1つですが、そこに含まれる心の有り様の幅はとても広くて、十人十色で尚且つ場面毎に微妙に違う、それを全部音の彩(いろ)で細かく描きわけたような感じでした。
第1楽章の出だしをテンポやダイナミックレンジをやや控えめにして、上品に‘nobilmente’を打ち出したその後にこんな芸をされたんでは、グッと身につまされないのがおかしいです。
もちろんそうした心の内底を音色の微妙な差分で細かく描き分けるのは木管でも金管でも同様で、内省的とも言われるこの曲を演奏するのに、まずは必要となる数多くの色の種類の絹糸を用意して、それを丁寧に織り込んでいくような・・・って西陣織みたいですが(爆)、大袈裟な表現を許してもらうとするなら、そんな作り方にも思えました。また、楽器毎のバランスや旋律の扱いなどもかなりデリケートに気を配っている様子で、オーケストレーションが厚めのわりには聴いてる分には随分とスッキリしているような印象の響きでした。
それでトータルで見ると、-自らの努力で勝ち得た数多の栄光よりも、その裏に隠された苦労と失ったものの大きさに比重を置いて静かに訥々と激動の人生を語って聞かせ、でも最後には「私は充分すぎるほど生を全うできたと思うよ」で締め括る、そんな老紳士の自叙伝-みたいな印象でした。
終楽章の最後の美しさも絶品で、拍手するのも勿体ないくらい無音の余韻をしばらく噛みしめたくなるほどでした。
・・・でもそうはいかないのが京響定期だったりして(苦笑)。
誰だよ、拍手のタイミング早すぎるって・・・
ヽ(`Д´)ノ
それはさておき、今まで聴いてきた大友&京響のコンビでは一番完成度が高くて感動的な演奏でしたし、熱心なエルガーファンのサイトでも常々高い評価を受けている大友さんなだけはあると思わされました。
これがブルックナーやマーラーだったら大阪でも存分にアピールできるんでしょうけど、今まであまりエルガーとは縁のなかった私でもプログラムが発表されてからずっと楽しみにしていましたし、その甲斐が充分すぎるほどあったのでとてもよかったです。
できれば大友さんのメガネ姿をもう少し見たかったけど(笑・眼鏡かけてはったんが指揮する時だけでしたし)。
マーラーといえば、来年3月に9番が控えてますが、今回の出来からかなり期待してもいいのではと思います。
終楽章がどういった演奏になるのか楽しみですね。
P.S.
カーテンコールの後、やおらマイクを持ち出した大友さん。
「常任退任のあいさつには、いくらなんでもまだ早すぎまんがな・・・」
と思ったら、先日文化勲章を受章された京響友の会会長の岡田節人・京大名誉教授へのお祝いの言葉でした。
そして、1階席中央に座ってらっしゃた岡田節人さんへ満場の拍手とともに2ndVnの三瀬さんから花束が手渡されました。
私は生物学には全く疎いので岡田暁生さん(京都大学人文科学研究所准教授:専攻は近代西洋音楽史)のお父君ということしか存じませんが(苦笑)、遅ればせながら、受章おめでとうございます。