夕方のにわか雨には参りました。
会場に向かいはじめた時に雷は鳴るわの土砂降りみたいな雨が降るわの・・・。
最近こんな天気ばかりでウンザリします(苦笑)。
幸い北山に着いた時は雨も小休止でしたけど。
平日夜の開催にマイナープログラムとあってはさすがに満員とはいかず・・・7割程度か?
プレトークでの下野さん、パンフに詳しい曲解説が書かれてあるし聴き手の想像の幅を狭めたくないからということで、各曲の内容には触れずに何故こういうプログラミングにしたのかの説明が主眼でした。
曰く、演奏会で採り上げられる機会の少ない作曲家にしたかったのと、来年がブリテンの生誕100周年にあたるので彼の作品を、中でも日本と関わりのあるシンフォニア・ダ・レクイエムを選んだ、とか。
前半2曲はパッサカリアつながりで、後半のペルトは(ブリテンへの追悼曲だという以外にも)前半のショスタコのVn協奏曲で盛り上がった熱をシンフォニア・ダ・レクイエムの前に一旦冷ましたかったので、とのこと。
ちなみに、会場に入った際に、ロビーのあちこちに、後半の2曲は続けて演奏するので拍手はしないでください、途中入場もできません、の旨の案内板がありました。
変わった演出をするんだな、とそのときは軽い気持ちでいたのですが、後半に実際入って彼の意図を存分に思い知ることになるとは・・・。
あと、客演でチェロ首席に入っていたのは群響のレオニード・グルチンさん、2nd首席はN響1stVnの林智之さんでした。
京都市交響楽団 第561回定期演奏会
2012年9月7日(金)19時開演@京都コンサートホール
◆B.ブリテン 歌劇『ピーター・グライムズ』~パッサカリア Op.33b
◆D.ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調 Op.77
(ヴァイオリン・ソロ・アンコール)
◇J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調BWV.1001~第1楽章:アダージョ
(休憩)
◆A.ペルト カントゥス~ベンジャミン・ブリテンの思い出に
◆B.ブリテン シンフォニア・ダ・レクイエム Op.20
指揮:下野竜也
ヴァイオリン:ヴァディム・グルーズマン
コンサートマスター:泉原隆志
ヴィオラ・ソロ:店村眞積
前半1曲目、ブリテンのパッサカリアは、まるで店村さんのために用意したかのような印象でした(笑)。
2曲目のVn協奏曲、ソリストのグルーズマンさんは楽譜を見ながらの演奏。
前半2楽章はなんだかドイツオケのショスタコ(例えばバルシャイ&WDR響のような・・・そういえばミッチーや広上さんと違って下野さんのショスタコってあまりピンとこないですよね?)に似てるかなぁ・・・とか、この曲で管セクションに首席が揃わないのはパートによってはちょっとつらいところもあるかなぁ・・・とかちょっと思いながら聴いていたのですが、第3楽章のパッサカリアからスイッチ入ったみたいな感じで、特に第8変奏からカデンツァに入ったあたりでグルーズマンさんに完全に火が付いたような演奏になっていって聴衆もホール全体が引き込まれるよう、そこから終楽章のラストまで全員でアンサンブルをきっちり保ちながら一気呵成に雪崩れ込んでいって、とても素晴らしい演奏になりました。
客席からのリアクションも当然ながら熱かったですね。
しとらす的には長大な曲を終えた後なのでアンコール無くてもいいやと思いながら手が痛くなるくらい拍手してたのですが、ありました、アンコール(笑)。
後半、まずペルトの曲は鐘と弦楽合奏だけの音楽で、その鐘もいつものパーカッションの場所ではなくパイプオルガンの鍵盤の前(ポディウム席よりも後ろ側)に楽器を置いて鳴らしてました。
音の大小で変化をつけながらも終始ゆったりと流れる音楽は深い祈りのようでしたが、下野さんはほとんど6拍子をきっちり細かく振っていたので、識者を見ながら聴いているとちょっとせわしない感じも(苦笑)。
そして、ペルトのカントゥスが静かに終わり、残響も無くなった瞬間にアタッカでシンフォニア・ダ・レクイエムへ。
下野さんが渾身の一撃を放つように右腕を突き出し、それに呼応してのティンパニ他の強い音。
なぜペルトのカントゥスとブリテンのシンフォニア・ダ・レクイエムを間を空けずに続けて演奏することを望んだのか、言葉よりもはるかに雄弁に、この出だしの響きだけで強烈に理解されられた気がしました。
ここからはもう下野さんと京響の独壇場、一瞬の緩みも無い壮絶な緊迫感のある音楽作り、そして終楽章での安らかな祈りを捧げるような厳かで静かな趣きでの幕引き。
はじめの2楽章では所々に怒りや魂の叫びといった感じのブラスセクションの咆哮する箇所が見られますが、そこを鋭利な響きでガツンと鳴らせたからこそ、他の部分とのコントラストがとても際立って奥行きの深い音楽になったのではないでしょうか(後半は各パートが首席揃い踏みだったので決めるべきところをしっかりと決めた感はありましたが、特にホルンパートは首席の垣本さんが1番に入ると全員身が引き締まったかのようにバシッと鳴らしてくれます)。
最後の一音の残響が止まり、下野さんが指揮棒を下ろしたところで熱狂的な拍手とブラボーの嵐でした。
どマイナーでしかも静かに終わる曲で、こういった熱狂的な反応はそうあるものではありません。
私はここ数ヶ月喘息気味であまり声を出せない分、手が痛くなるのもかまわず拍手しまくりました(笑)。
カーテンコールで何度もステージに呼び出される下野さん、コンマスらが指揮台に上がるようアイコンタクトを送っても「シンフォニア・ダ・レクイエム」の総譜をポンポン叩いて賛辞は作品にあげてくださいという仕草をするだけで自分は引っ込むし・・・まぁ相変わらず腰の低い方です(笑)。
今回は私にしては珍しく楽屋口の前で指揮者を出待ちしました。丁寧に応じてくださった下野さんにサインをもらうことよりも、ご本人に直接今日の演奏に対する感謝の言葉と京響定期でまたチャレンジングなプログラミングを希望する旨の言葉を直接伝えられて満足でした。次が何時になるかはわかりませんが・・・。
★アルヴォ・ペルト作品集(2CD)/パーヴォ・ヤルヴィ&エストニア国立響、他【EMI】