NHK Eテレ
「クラシック音楽館」
3月30日(日) 21:00〜23:00
オンエア!!!
・・・というわけで、何の因縁か知りませんが私の席の近くにデッカイ撮影カメラがあって、久しぶりにこうした機材を見たなぁ〜と思いつつ、カメラアングル的には死角になるので自分の姿は幸いにも映らないと妙な安心をしたりしました。
だって犬HKになんぞ自分の肖像権を渡したくないもんwww
閑話休題。
プレトークは広上さんに呼ばれて第2ヴァイオリンの後藤良平さん、トロンボーンの井谷昭彦さんにトランペットの早坂宏明さんと3人のベテラン団員が登場して、それぞれにマラ1にまつわる思い出話を語ってもらうという趣向がメイン。井谷さんだったかな、初めて演奏したのがコバケン常任回で、ミスしてどうのこうのと苦い思い出を話した後を受けて、広上さんがコバケンの口真似で彼が言いそうなことを喋って笑いを取ってましたが、そのコバケン&京響のマラ1の演奏を当時たまたまTVで観たらしい広上さんが今はあの人のことをどう思っているのかがなんとなく垣間見えた気がしてツボでした(笑)。
京都市交響楽団 第577回定期演奏会
2014年3月14日(金)19時開演@京都コンサートホール
◆S.ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18
(ピアノソロ・アンコール)
◇S.ラフマニノフ 絵画的練習曲《音の絵》〜第8曲 Op.33-8
(休憩)
◆G.マーラー 交響曲第1番ニ長調
(アンコール)
◇R.シュトラウス 歌劇『カプリッチョ』 Op.85〜間奏曲「月光の音楽」
指揮:広上淳一
ピアノ:ニコライ・ルガンスキー
コンサートマスター:渡邊 穣
えぇ〜、感想・・・この感動をどう伝えたらいいんでしょうね。
一つ言えるのは、今日の2曲、ラフ2とマラ1は当分どころか自分があの世に行くまで全然聴かなくてもいい、それくらい満腹感たっぷりの印象でした。
まず前半のラフマニノフ。ルガンスキーさんってサッカーのセンターバックでもできそうな上背があって、プレトークで広上さんがラフマニノフのエピソード(長身で手が大きく片手でオクターブ以上の上の音を押せるほど)を引き合いに出して紹介していたように確かに手も大きそうに見えましたが、そのフィジカルの優位性と技巧の高さを華麗な方に向けるのではなく、多彩であっても硬派なピアニズムとスケール感の構築に注ぎ込んでいたのは此方の予想以上で、とかく甘美でロマンティックな叙情に流されがちな演奏には辟易していた私にとっては願ったり叶ったりの素晴らしいパフォーマンスでした。京響の伴奏もルガンスキーさんに負けじとガップリ四ツでしかり支えることができていて、特に弦セクションが頑張って位負けを感じさせなかったのは見事でした。
ピアノソロのアンコールは同じラフマニノフの『音の絵』から1曲。技術的難所を楽々クリアするだけではなくて、侘び寂びにも似た渋い美しさを湛えた音楽に仕上げていたのは、さすがラフマニノフ弾きとして認められるに相応しいピアニストですね。
そして後半のマーラー。1番は大友さんがザ・シンフォニーホールでの大阪公演で振ったのを聴いて以来だったかな?紅葉の季節で妹が休暇取って京都に来るのに合わせてチケット確保して連れて行って、2人して満足して帰ってきた記憶があるのですが、あれ随分昔でしたよねぇ・・・大友さんらしくやや淡白なところもありましたが、当時の京響のレベルを堪能するには充分な出来栄えの演奏でしたけど、あれからオケが何段階高みに上ったのか聴き手が感慨に浸る余裕が、実はありませんでした(笑)。それくらい素晴らしく充実した演奏だったいうことで・・・そういえば、広上&京響コンビでマーラー聴くのは初めてですね。地方公演ではやってたかもですが、少なくとも定期では今まで無かったし。
それはさておいて音楽の話ですが、第1楽章の序奏、弦セクションがpppの微弱で単調な乾いたような音を持続させて、合間合間にppで管セクションによるいろんなモチーフが入るという、演奏する側にとってはおそらくとても緊張を強いられる開始だと思うのですが、その入りが今日はパーフェクト!ここの緊張の糸がピーンと張り詰めるような弱音がしっかり表現できていたのが全てを決めたようにも思いました。初っ端の入りが良かったからこそ、後々に様々な形で出てくるブラスセクションの咆哮やマーラーがスコアに記した特殊な指示書き―木管のベルアップやホルンが一斉に起立しての強奏など―の効果も出てくるし、クライマックスも一層映えるのではないでしょうか。テンポは全体的にやや遅めか?ダイナミックレンジと表現の幅が凄く広く取られていて随所に広上節も見られましたし、終楽章では京響ご自慢のブラスセクションが期待通りの大活躍っぷりで、オケ渾身の全力全開の素晴らしい演奏でした。個人的には第3楽章の葬送行進曲でもう少し暗い部分を強調してもよかったのではと思いましたが、その辺は好みの範疇ですし、演奏の質的には掛け値なしの好演奏でした。演奏後の団員たちの表情やレセプションでの広上さんの挨拶から察するに、京響としてもベストパフォーマンスを本番で出すことができて満足しているような印象を受けました。
ちなみに、シーズン最後だからなのかTVカメラを意識してなのか、定期では珍しくアンコール。“花の章”をといきたいところだけどマーラーの後にマーラーではしつこすぎるし時間もと笑いを誘って演奏したのがリヒャルト・シュトラウスの『カプリッチョ』から「月光の音楽」。マラ1の後で疲れていたであろうにもかかわらず、ホルン首席の垣本さんがソロをバッチリ決めてくれたのはさすがでした。
今日の京都のみならず明後日の東京公演もかなり早い段階で前売りが捌けたそうで、残念ながら今日も明後日も無理という方は、ぜひ30日夜放送のNHKの番組をご覧ください!
・・・そういえば、3月定期では恒例の卒団セレモニー(定年退職する方への花束贈呈)が今回は無かったですね。珍しいというか4管編成の大所帯なのにそういう年もあるもんなんやな・・・。
※3月17日追記:こちらも前売りが早い段階で売り切れたらしいサントリーホールでの昨日の東京公演、大好評だったようでなによりです。門川市長が同行していたのは聞いてましたが、高円宮久子様や谷垣法相らVIPのご臨席もかなりいたようで(あと同業者ではフェドセーエフ御大がいたらしいし高関さんと下野さんも来てたとか)、そうした方々を前に京響歴代最強のベストパフォーマンスを披露できて市長もさぞかしご満悦だったのではないでしょうか。オフィシャルサイトで自慢するだけじゃなくて、ちゃんと定期2日間公演のための予算増やしてくださいよ!!
>門川市長殿
それはさておき、ツイッターのTL見ると広上さんの指揮が在京オケの時とは全然違うといった感想が目についてちょっと驚きました。私は広上さん指揮の演奏会は仙台に住んでいた頃だから20年以上前かな?仙台フィルに客演されたのと、あとは京響定期初登場の前に大フィルの定期で振ったのを見ただけなので、逆に在京オケを振る時の広上さんを知らないのですが、京響の常任になって数年とはいえ回数が多いわけではない(前任者よりはずっと少ない)ので、そこは京響と広上さんの相性の良さと、限られた時間の中でお互いに濃密な時を過ごして信頼関係を高めていった結果なのかな、という気がします。
あと、しとらす的には評論家として信頼できる東条碩夫さんから絶賛の言葉をいただけて嬉しかったです。
→http://concertdiary.blog118.fc2.com/blog-entry-1849.html
それから、次年度よりお世話になる高関さんのツイートがこちら↓
京響東京公演を聴く。前半Рах18, ルガンスキーさんの強力なピアニズム。すべての音符が聴こえてくる。表現も豊かで澱むことなく、作品の重厚さを改めて認識させてくれる。オケのバランスを少し大きめに設定した広上さんの入念なサポート。壮大な協奏曲に仕上がり聴きごたえ十分。良い曲だなぁ。
— 高関 健 (@KenTakaseki) 2014, 3月 17
後半GM1:練習に充分時間をかけ、オケからの自発的、積極的な表現がうれしい。広上さんもさらに思い切り良く、果敢にスコアの表現に挑む。互いの緊密な信頼関係が見ていても楽しい。京響は明るい優雅な音色を獲得している。アンコールはCapriccioから月光の音楽。すべて充実の演奏。
— 高関 健 (@KenTakaseki) 2014, 3月 17