京都市交響楽団 第578回定期演奏会(指揮:下野竜也)

今年度から常任客演指揮者に就任された下野竜也さんの、いわばお披露目会みたいな感じの今日の定演ですが、プレトークで「(定演の完売御礼連続)記録ストップは僕のせいです」ってゴメンナサイされてて、彼の謙虚な性格らしい言葉に心の中でドンマイと思ってたのですが、それでも今回のようなプログラムなら一昨年まであたりだとガラガラであったろうホールは完売に近いと思わせる客の入り様で、先月末の全国ネット放映の効果もあるのかな・・・などと考えてました。

・・・が・・・

女神ミューズは謙虚かつ真摯に努力する人に微笑みを返してくださったようで、残っていた当日券は開演までに全部売り切ったとのこと。下野さんが記録ストッパーにならずにすんでホッとしました。

閑話休題。

プレトークで新・常任客演指揮者さんの「マニアックなプログラムやります」宣言に私自身は拍手で応えました(私と同じように拍手してたのが少数派っぽかったのはキニシナイキニシナイ)が、その選曲にブルックナーの初期交響曲は入るのですか?と質問したくなったのは内緒でもなんでもないですwww

ちなみに、パンフの最後の方に小さく告示されてただけだったので見落としそうになりましたが、これまでも何度か客演に来てくださっている神奈川フィル首席の山本裕康[@celloyasu]さんが4月1日付で京響の特別客演首席チェロ奏者に就任されたとのこと。京響にはソロ首席として上村昇・京都市立芸術大学教授がいますけど、1952年生まれの上村教授は肩書付きの特殊な契約じゃなければとっくに定年を迎えられてるお歳ですし、そうでなくとも今までも定演でステージに上がるのが不定期でしたから、常勤の首席奏者が欲しいところに山本さんが入ってくれると心強いのですが、神フィルとの契約がどうなってるのかしら?京響の弦セクションのネックは第2ヴァイオリンとチェロの首席が不在で固定されてない事にあるので、チェロに関しては山本さんの肩書が‘特別客演’ではなく正規の首席になってくれるといいんですけどね・・・。

 

京都市交響楽団 第578回定期演奏会
2014年4月25日(金)19時開演@京都コンサートホール
◆A.ドヴォルザーク 序曲三部作『自然と人生と愛』
          ・序曲『自然の中で』 Op.91, B.168
          ・序曲『謝肉祭』 Op.92, B.169
          ・序曲『オセロ』 Op.93, B.170
(休憩)
◆B.マルティヌー オーボエ協奏曲 H.353
 (オーボエソロ・アンコール)
 ◇J.S.バッハ 無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013〜第1楽章:アルマンド
◆L.ヤナーチェク シンフォニエッタ JW.VI-18
指揮:下野竜也
オーボエ:セリーヌ・モワネ
コンサートマスター:渡邊 穣

 

前半のドヴォルザーク、もっぱら『謝肉祭』だけが頻繁に演奏されますが、本来は演奏会用序曲の3部作『自然と人生と愛』として1セットで8番シンフォニーと9番シンフォニー『新世界より』の間の期間に作曲されているもので、組曲のように捉えているという下野さんと京響の演奏は連続してなされていたので、実際に生で聴いてみるとナルホドという印象を強く抱かせる好演でした。読響で交響曲ツィクルスをやってたほど(プレトークではかつて友達にはなれないと公言したマーラーと比較してドヴォルザークとは一緒に食事したいという比喩を使ってましたがw)入れ込んでいるだけあって、下野さんのドヴォルザークは彼なりの自己主張がしっかり感じられるものでしたし、3曲をバラバラでなく1セットとして俯瞰的に見つつ細部にも充分気を配っていました。リズム感はよくても旋律の面であまりボヘミア的な情緒に偏ってないあたり、アプローチがマルクス・ボッシュに似てるかな、という印象でしたね。

・・・ただですねぇ・・・プレトークで「連続して演奏するから拍手しないで」と念を押されてたにもかかわらず言うこと聞かずに拍手してたバカが大勢いましたが(苦笑)、あれ、身振りで止めさせるくらいのことをしてもよかったんじゃないかなぁ〜。ただでさえ客層はマナーの悪いのが多いのだし。今回の下野さんは遠慮して軽く会釈する対応でしたけど、私のように指揮者の意向は無視できない真面目な聴き手からすると、掟破りされたら傍迷惑もいいところで興醒めなんですが。

閑話休題。

後半最初はマルティヌーのオーボエ協奏曲。予習がてらNMLで聴いた時にはチャーミングでユニークな音楽だなと感じましたが、録音でなく生演奏に接すると編成の小ささもさることながらピアノを正面ド真ん中に置くという独特の配置を視覚と3D空間効果で体感できるのがいいですね。
ソリストのセリーヌ・モワネさんはモーリス・ブルグ氏の教え子。年齢的にもしかしてとは思ってましたが、京響のシャレールさんとはパリの音楽院で同窓だったそうです。フランス人でありながらマンハイム→ドレスデンとドイツの著名なオペラハウスからソロ奏者として迎えられるだけあって、音色はニュートラルな感じでしたね。ハイトーンの濁りなき柔らかい美しさがとても凛々しくて印象的でした。あの音域が綺麗に遠くまで抜けるように出せるのは、さすがシュターツカペレ・ドレスデンのソロ奏者ですかね。自身がオケ団員ということもあってか身振りとアイコンタクトで伴奏とコンビネーションを作る姿勢にも好感が持てました。

そして最後、ヤナーチェクのシンフォニエッタ。バンダが最後方にズラッと立って演奏する光景はサウンドのボリュームだけでなく視覚的にも壮大なものがありましたね。こういったのを経験できるのも生演奏の良さ。エキストラが大勢入るので彼らが京響ブラスのサウンドに響きを合わせられるか、特にトランペットがちょっとでもズッコケたらお話しにならなくなる代物ですが(身も蓋もない話すると20数分の曲に対して2桁の金管奏者を臨時雇いしてギャラは1日分出さないといけないのだからコストパフォーマンスがめっちゃ悪いw)、ナエスさんがバンダ隊のトップ、早坂さんがオケ側の1番としてリードしての演奏はしっかりとブレンドされた響きで素晴らしかったですね。第1楽章のファンファーレがバッチリ決まったので、あとはその良い流れを維持して最後まで堅実に引っ張っていた感じでしたかね、全体的にもブラボーな演奏でした。

カーテンコールの締めを大声で
「これからも京響をよろしくお願いします!」
とアピールの御礼をされた下野さんが、次回の定期登場時にはどんなプログラムを引っさげて来るのか、京響との相性も良いだけに大いに楽しみですね。

レセプションではモワネさんもラフな服装でご挨拶。思ってたよりも背が高くない(ステージでの姿からもっと高身長かと思ってましたがヒールが高かったんかな?)のとフランス語でなく英語で話していたのがちょっと意外でしたが、京響をフレキシブルだと評してくれた彼女は今回の京都滞在がオケ帯同ではなく単身だったこともあって少しは観光の余裕があった様子でした。またソロで来れるといいですね。