エスペリオンⅩⅩⅠ(ヴァン・テ・アン) とはジョルディ・サヴァールが創設した古楽アンサンブルで、主にスペインのバロック音楽を中心をしたレパートリーを持っているようですが、録音の存在は知ってはいるものの聴く機会にこれまでなかなか恵まれず、いわば今夜はぶっつけ本番で聴きました。
19時開演、場所は大阪のザ・フェニックスホール。
メンバーは
ジョルディ・サヴァール(監督兼ソプラノ・ヴィオラ・ダ・ガンバ)
モンセラート・フィゲーラス(ソプラノ)
アリアンナ・サヴァール(カント&ハープ)
平尾雅子(テナー・ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ファーミ・アルクァイ(バス・ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ロルフ・リスレヴァンド(ヴィウエラ&ギター)
ベゴーニャ・オラヴィデ(サルテリオ)
ペドロ・エステヴァン(パーカッション)
ヴィオラ・ダ・ガンバを3種類見たのも初めてなら、サルテリオという楽器も初めて見ました。おそらく通奏低音を担当しているようでしたが。
当日はプログラムと共にA4紙1枚に書かれたジョルディ・サヴァールの時代背景の簡単な説明を含んだ解説が付けられていて、スペイン語も知らなければ世界史も断片の知識しかない私にはとてもありがたいものでした。16~17世紀のスペインの音楽を集めたプログラムだったのですが、曲をどう紹介してよいのやら(短めの曲が多い上に作者不詳のものも多い)・・・というわけで、テーマのみでお茶を濁します(苦笑)。
◆ドン・キホーテとミゲル・デ・セルバンテスの音楽
『スペイン黄金世紀の光と影』
◇第1部◇
-モリスコのロマンセと舞曲-(4曲)
-セフィルディーのロマンセ-(3曲)
-ヴィリャンシーコと宮廷音楽-(4曲)
(休憩)
◇第2部◇
-歌と弦楽器のための舞曲-(8曲)
のっけからもう
「今まで聴いたんと全然違う!」
でして、古楽アンサンブルも好きですからドイツ・フランス・イタリアのものなら少しは聴きかじってはいるのですが、イスラムっぽいメロディーがあってオリエントの薫り漂う雰囲気で、クラシックを聴いているというよりはエスニック混じりのヒーリング音楽を聴いているような心地好さ。フィゲーラスとアリアンナの声もとてもきれいでした。
開演前は閑古鳥だった臨時のCD売場も、休憩中は人だかり。もちろんサイン会の予定を告知していたわけではないんですよ。純粋に演奏が気に入って、だと思います。
さて、第2部は第1部よりも全体的に大衆音楽っぽい感じ。最初がギターソロだったのですが、ロドリーゴの『ある貴紳のための幻想曲』のラストを想起させるメロディーがあるかと思えばエンディングに向かってはもうフラメンコのようなノリで、
スペインのギタリストって、
ブラジルのサッカー選手のように
特別なDNAでもあるんですか?!
・・・すんまへん、つい「アレ!!」と叫びそうになったのは私(笑)。
ジョルディ・サヴァールの解説には、フェリペ2世の治世を含むスペインの黄金期にはほんの一握りの人が莫大な富に与れた裏で多くのスペイン人が極貧の生活を強いられた、というようなことが書かれてましたが、だからこそ当時の人々は音楽や舞踊でささやかな楽しみを精一杯満喫したかったのでしょうか、気持ちよく楽しんで聴ける曲が多かったです。プログラミングの妙かもしれませんけど、各演奏者が皆高い技術レベルにあるだけでなく、音を奏でること自体をとても楽しんでいらっしゃるような雰囲気がこちらにも伝わってきて、聴いている方も幸福に包み込まれているような感覚で心地好く楽しむことができました。