大阪シンフォニカー交響楽団 第120回定期演奏会
2007年9月12日(水)19時開演@ザ・シンフォニーホール
◆J.ラインベルガー オルガン協奏曲第1番ヘ長調op.137
(休憩)
◆A.ブルックナー 交響曲第5番変ロ長調[ハース版]
指揮:児玉宏
オルガン:鈴木隆太
コンサートマスター:森下幸路
生演奏はチューリッヒ歌劇場以来。東京から帰ってきて以来わざわざ大阪まで出かけるのがめんどくさくて、とうとう大阪クラシックには行かなかったですし。あんな素晴らしい音楽を堪能したら、生半可な演奏では感動が得られませんしね(笑)。で、今日はというと、なんたって児玉&シンフォニカーのブルックナーですし、前半も演奏機会のほとんど無さそうな曲ですので、こちらは行かないわけにはいきません。
お客さんの入りはまぁまぁでしょうか。オルガンを使うためW~Z列には一人も入れてませんでした。さて、メンバー表を見ますと・・・Hnこそ6人ですがTp×3にTb×2・・・私はブルックナーの5番の生演奏は朝比奈さんで2回聴いただけで(都響と大フィル)、あの方は5番では金管は倍管にされますから(シカゴ響でもそう提案したらハーセスさんたちから「自分達が倍吹くからいらん」と反対されたエピソードがありましたっけ?)、シカゴ響ならイザ知らず日本のオケで大丈夫なんかしら?で、あとは・・・あら?!京響の高山嬢がいる!これは心強いですね。他に2ndVnに客演首席で田村安紗美さん。1stVnはコンマスが森下さんでその隣が田村安祐美さんなので姉妹で隣通し。
まあ、そんなこんなで前半。ラインベルガーに馴染みがなければオルガンのコンチェルトというのもあまり馴染みがないような。編成はオルガンの他は弦楽+Hnのみとシンプルなもの。CD買おうにも気安く買えそうな物がない(入手困難か廃盤)し、ブルックナーの前座でやるくらいならそんなに突拍子な曲でもないだろうと思って予習もせずに聴きましたが・・・恥ずかしながらジワッと涙ぐんでしまい止りそうにありませんでした(苦笑)。オルガンの音色が町の教会で聴いてるような感じ(サン=サーンスの交響曲やツァラトゥストラでやるようなあんな煌びやかなサウンドとは正反対)で、弦楽合奏がちょうど賛美歌のコーラスのようにオルガンと上手く溶け合っていくので、コンサートホールで演奏を聴いているというよりは(あまり大きくない)教会のミサにいる気分です。そして、ド・ロ神父が建てられたり設計に携わったりされた出津(しづ)天主堂や黒崎天主堂、そして-実際に見たのは少なくてほとんどは写真でしか見たことのない-鉄川与助さんが長崎や五島を中心に数多く建てられた教会のことを次々に連想してしまい(ついでにそこでオルガンを聴いているイメージを想像してくださいな)、マジメに曲に集中していると涙腺が緩みっぱなしで困りました(苦笑)。
編成が編成ですので下手糞な弦ですと涙が怒りか眠気に取って代わりそうなところですが、そこはそれ、シンフォニカーの弦はとてもいいですね。児玉さんの巧みなバランス取りで鈴木さんのオルガンの音色にとてもよく響きが溶け合っているように思いました。
ちなみに、上で挙げた2つの教会は長崎の外海にあるのですが、外海といえば遠藤周作『沈黙』の舞台となった地域で、
「人間がこんなに哀しいのに
主よ
海があまりに碧いのです」
の一説をご存知の方も多いのではないでしょうか。
今でも国道202号線辺りから見える海は吸い込まれそうなほど青くて綺麗ですよ。
あとのことはここで書くと長くなりそうですので、遠藤周作文学館のHPとか、ユネスコ世界遺産登録を目指している長崎の数多くの教会に関してはhttp://www1.odn.ne.jp/tomas/やhttp://www1.odn.ne.jp/tetsukawa/index.htmlとかをぜひご覧ください。
さて、前半は個人的にツボに嵌ってしまってウルウル状態。後半は、お待たせしました(笑)というか誰もがコレ目当てだろうというブルックナーの5番。期待に違わず、どころか期待以上の素晴らしい演奏でした。生で聴いた朝比奈=都響(’96年)の大聖堂のオルガントーンといった趣きとはまた違いますが、14-12-10-8-6の弦に2管編成ベースでHnは6のTpが3という(大フィルあたりと比べるとやや小ぶりな)編成とは思えないほど充実した響きを終始保っていて、金管、特にTpが最後まで自信を持ってしっかり吹ききっていましたし(細かなキズもあったけどスタミナ切れを気力でカバーして締めたのはgood)、全体的に明晰で構築感もしっかりしてて、なにより楽員全員が必死に児玉さんの棒に喰らいつくように演奏されていました。
ややゆっくりと確かな足取りで歩くかのような1・2楽章-しっかり弾いた弦も良かったし2楽章の高山さんのObのソロもさすが(ただし拍子がわかりにくく書いてあると朝比奈さんが語った箇所で弦がわずかにモタツキ気味に聴こえたのは楽員が完全には慣れてないからか?)-の後、スケルツォでは一転してエネルギッシュで小気味よく、終楽章ではグイグイ引っ張るかのような児玉さんの気迫こもるタクトに導かれて骨太で熱く若々しい音楽を皆で作り、クライマックスも立派に築き上げていました(演奏のタイプは違いますが、10年以上前でしょうか、初めてシューリヒトとウィーン・フィルのライヴCDを聴いた時の高揚感に近いかも)。
どれだけ会心の演奏だったかは、指揮棒を下ろした児玉さんが真っ先に、そして何度も楽員たちにサムアップしてる姿(最初はTpに向かってしてたかな?)で判ろうかというものです。観客の熱い拍手は当然のリアクションですね。「いま関西でブルックナー聴くならこのコンビ」という定評と期待を一切違えないものでした。
何度もカーテンコールで児玉さんが呼び出されますが、楽員たちにはそれぞれ立たせて拍手を受けさせても、自分は決して指揮台に立ちません。楽員全員で畏敬の念と感謝の心を拍手とアクションで示しても、コンマスの森下さんがどんなに促しても、自分が目立ってはいけないとばかりに児玉さんは指揮台に上がらず、「拍手は楽員たちにね」と大きく手を広げて、あとは客席に向かって深く頭を下げて御礼をしたらサッサと引っ込んじゃうし(笑)。指揮者としての経験値・実力・音楽性だけではなく、こういったあたりも楽員たちからとてもよく慕われる一因なんでしょうね。
こうなると4日後の名曲コンサートも俄然楽しみになってくるのですが・・・伊藤恵さんと田部京子さんも客演するのに・・・あいにく行けないのがとても×100残念・・・orz
ところで、来年の定期と名曲コンサートのプログラムは既知の通りですが、
“「定期演奏会のプログラム」は、そのオーケストラの「名刺」であると共に「政治的な意思表示」でもあります。曲目を選択し、お客様に聴いて頂くために演奏する-という行為の裏には、必ず「何故、今この曲なのか?」という<問>があり、「だから」という<答>があります。また「公開の場で演奏をすること」は、聴衆の皆様に対して、西洋音楽の持つ多様性や多面性に直接接して頂くことの出来る「場を提供する」という意味で、私たちオーケストラが持つ「文化的社会的責任」を担うことにほかなりません。”
という言葉を真っ先に実践したもので、就任1年目から非常に大きな期待を持たせてくれるものとなっています。だいたい‘名曲コンサート’と名のつく演奏会のメインにグノーの交響曲第2番を持ってきたり、東京公演にメインでアッテルベリの交響曲第6番を引っさげて行ったり・・・って某60周年オケとは大違いの積極性をすでに示しているところにも、とても好感が持てますね。
児玉宏&大阪シンフォニカーに注目!!