YouTubeでロッシーニ

春先から欧州が軒並みロックダウン中で、活動を停止されたオーケストラやオペラハウスが、お詫びとばかりに過去公演のお蔵出しをしてきているのだけど、おかげでロッシーニのオペラにどハマリ中。

 

まずはコレ、ロッシーニの代表作、『セビリアの理髪師』。20年近く前の、ネッロ・サンティがチューリッヒ歌劇場に客演した時のライヴ。ロジーナ役のヴェッセリーナ・カサロヴァを筆頭に、皆さん歌と演技がもうキレッキレ。随所に出てくる、いわゆる“ロッシーニ・クレッシェンド”も巨匠サンティのタクトが冴え渡ってて、とにかく笑ったり感嘆したりなオペラ・ブッファ(今風にいうとドタバタコメディ)。2007年9月に初来日した際には、当時のGMDフランツ・ウェルザー=メストが指揮した『ばらの騎士』を東京まで観に行ったのだけど、同じ日に美智子様が第2幕から観賞にいらしてた偶然も、当日の公演が素晴らしかったことと併せて、私にとっては良い想い出。

 

ロッシーニのイタリア時代最後のオペラ『セミラーミデ』。2017/18シーズンのヴェネツィア・フェニーチェ劇場での上演。ちなみに『セミラーミデ』の世界初演を行ったのがこのフェニーチェ劇場。
ウィーンでベートーヴェンと面会した際に
「君はオペラ・ブッファを書いたほうがいいよ。」
と言われたらしく、
「オッサン声楽モノはてんで駄目なくせにエラソーなこと言うなやボケ!」
とばかりに?発奮して書き上げたオペラ・セリアで、ネタ元は古代ギリシャの伝説に出てくるアッシリアの女王セミラミス。
『セミラーミデ』の映像Blu-ray+DVDは今のところ1つしかリリースされてないので、世界初演した縁のあるフェニーチェ劇場での、このライヴ収録も近い将来Blu-rayでどこかのレーベルがリリースしてほしい。

 

4月7日から3ヶ月限定で公開されているロッシーに最後のオペラ作品、グランドオペラ『ウィリアム・テル』。序曲だけが有名になっちゃってる作品だけど、あの序曲の後に壮大なストーリーがたっぷりと続いてるなんて・・・やっぱりオペラは観てなんぼのジャンルなんだなぁ〜と。
ハプスブルク家から任命されて来た悪代官による、ある些細なことがきっかけの策謀に嵌ってしまい、一人息子の頭上に置かれたリンゴの実をクロスボウで射抜くよう命じられたんだが見事に成功、その後の状況が二転三転するな中で倍返しのリベンジをやってのけたテルの伝説に、スイスの建国の由来とをミックスされて書かれたフリードリヒ・フォン・シラー(=ベートーヴェン第九の歌詞を書いた人)の戯曲『ヴィルヘルム・テル』を下敷きに、フランス語への翻訳とオペラオリジナル設定の微調整も入れて作曲。
パリでの世界初演は大成功で当地では長くレパートリーになってたらしいですが、ロッシーニの故郷イタリアではハプスブルク家による干渉がまだまだ強くて、しかもロッシーニは既に隠遁生活に入っていたので、仏語→伊語への改訳はカットありの内容改竄ありのでグデングデンの状況となってたようです。20世紀も終わりになってようやく事態が改善し、ロッシーニ財団の下でM.エリザベス・C.バートレット編「Fondazione Rossine di Pesaro」の Critical Edition(批判校訂版)が1992年に刊行され、以後これが決定稿として定着していくこととなりました。

YouTubeの OperaVisionチャンネルで期間限定公開されているのは、2013年のロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルで上演された演奏のライヴ収録で、Blu-rayとDVDで早くからリリースされているものです。日本語字幕が入ってないのが唯一の難点ですが、アルノール役を務めたテノール歌手ファン・ディエゴ・フローレスの明るく伸びのあるハイトーンを筆頭にメインキャストのみなさんがそれぞれ熱唱と迫真の演技を披露、ノリノリの合唱団の人たちや、ミケーレ・マリオッティの的確なタクトで舞台を支えるボローニャ歌劇場管弦楽団の熱演など、見どころ・聴きどころ満載ですので、ぜひ円盤を購入して観てほしいなと願ってます。
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