半年ほど前にリリースされて高い評価を受けている、ブロムシュテット&ゲヴァントハウスのコンビによるブルックナーの8番。今回リリースされたのは一昨年の来日公演の記憶も未だ冷めやらぬ7番です。
★A.ブルックナー 交響曲第7番ホ長調〔ハース版〕
/ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団【Querstand】
2006年のゲヴァントハウス大ホールでのライヴ録音によるSACDハイブリッド盤。
演奏時間は第1楽章から順に
22:00 – 24:22 – 10:08 – 13:14
の69分45秒。数字だけ見るとわずかに速いかな?というところなんですが、来日公演の時もそうでしたけど実演ではもっとスケール感が大きいという印象です。さほど年月を経ていないこともあってか、ディスクを聴いた感想は京都での実演を聴いたものとあまり変わりありません。ですので、その時の演奏会評をもって代えさせていただきたいと思います。
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ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団来日公演
2005年2月19日(土)17時開演@京都コンサートホール(大ホール)
★F.メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調Op.90『イタリア』
★A.ブルックナー 交響曲第7番ホ長調
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
購入時の手違いで、私にしては珍しく?高い席を買ってしまい、1階のかなり前めの席だったのですが、弦の音を堪能するのにはよかったかもしれません(京都コンサートホールは席によっては音が響いてこないので)。2曲ともゲヴァントハウス所縁の曲です。メンデルスゾーンは言わずもがな、ブルックナーの7番もアルトゥール・ニキシュの指揮で初演したのがこのオケですし。
ドイツのオケを聴くのは本当に久しぶりでしたが、弦楽器の対向配置は初めて見たかも・・・。ブロムシュテットさん、「失礼ですが御幾つでしたっけ?」というくらい足取りや身のこなしが若々しく感じる登場の仕方です。
で、『イタリア』の第1音からすっかりノックアウト。南欧的なものはそんなに感じなかったのですが、なんというか、小春日和の、きれいに澄みわたった青空で、やさしく射しこんでくる暖かい陽(ひ)の光り・・・最初の弦の音がもうそんな感じなんですよ。もうアカン・・・(爆)。思ったよりも明るめの音色、アンサンブルも精緻、やや速めのテンポで1つの音も疎かにせず、尚且つ曲の起承転結や表情のメリハリをしっかり付けていこうというブロムシュテットさんの意図に身を乗り出して応えていく楽員たち(後ろのプルトにいた年配の楽員さんたちが率先して?上半身を大きく揺らしながら懸命に弾きまくってるし・・・)。CDで聴くときは明るく親しみやすいメロディーが出てくる第1楽章の後はつい聴き流してしまいがちになるのですが、この日は「そんなん許しまへん」というわけでもないのでしょうが、自然と最後まで聴き入ってしまう『イタリア』でした。
それはブルックナーの7番シンフォニーでも同じこと。曲の構成力というか完成度というか、1・2楽章と3・4楽章の間に断層があるみたいで(8番と違って)バランスがよくないのが気にかかったりするのですが、ブロムシュテットさんとゲヴァントハウスのコンビに限ってはそんな心配は一切無用で、あれほど曲の“起”“承”“転”“結”が論理的に明確に繋がった7番は初めてでした。(今まで何聴いてたんや、いうツッコミは無しで・笑)
ブルックナーではお馴染みの、出だしの弦のトレモロから明るめの音色で美しく、時に豊かに、厳かな響きでホールを満たしてくれます。音量も随時的確にコントロールされ、モヤモヤしたところが一切なく、終始インテンポでサラサラ流れるようで時折句読点を打つようなメリハリの付け方は明瞭な印象がしますが、それでいて雄大なスケール感を損なうこともありません。第3楽章以降で特に感じたのですが、緻密な設計の下、大勢の腕の確かな職人さんたちが棟梁の指示でテキパキとレンガ造りの建物を造っているのを目の前で見ているかのようでした。建物の基礎部分からココはこう、ソコはこう、アソコはそう、ココとソコがこうなっているからココがこう出来上がって・・・という具合に設計図と実際の建築過程を照らし合わせて見ているような印象でした。おかげでこの曲の持つ音楽の構造が論理的かつ明確にできているように感じられて、何かストンと腑に落ちたみたい。終楽章の盛り上がりも素晴しく、ゴールに向かって一歩一歩確かな足取りで心持ち軽めに歩いていって気分良くゴールにたどり着きました、というような感じです。美しい響きに一糸乱れぬアンサンブルで見通しも良く、先(これから続く長丁場のツアー)が心配になるほど楽員全員が気持ちのこもった熱い演奏で、終わった後は興奮と清々しさとが入り混じったような感覚でした。