フィリップ・グラス:交響曲第2番、第3番(+交響曲第4番『ヒーローズ』、他)/マリン・オールソップ&ボーンマス響

ランダムで出てくるNMLトップページの「推薦タイトル」で偶々目にして聴いてみたディスク。
それが自分の心の琴線に触れるものだったりすると、宝くじ当ったみたいでちょっと得した気分になるのはどうしてでしょう?www
ちなみに私はクジ運・・・どっちかいうと悪い方かな?(苦笑)

閑話休題。

フィリップ・グラス[http://www.philipglass.com/]、1937年生まれのアメリカ人作曲家。本人はあまりそう言われたくないようですが世間での分類上は現代音楽の中でも“ミニマル・ミュージック”というジャンルだそうです。ちなみに、顔は下の写真のような感じ。
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〔※写真:昨年9月の高松宮殿下記念世界文化賞受賞者会見にて〕
オールソップの名前がなかったらスッ飛ばしてたかもしれませんが、彼女がヴァイオリン奏者としてグラスその人とグラス作品の録音にかかわったこともあるという、そんなエピソードを目にしたら興味がわきまして、聴いてみたら独特のユニークさに魅力を感じた、というところです。オケはかつての手兵で退任後も名誉指揮者の称号を送られたボーンマス交響楽団[http://www.bsolive.com/]、イギリス南部の都市を本拠としている団体です。

 

フィリップ・グラス:交響曲第2番、第3番/マリン・オールソップ&ボーンマス響【NAXOS】
フィリップ・グラス
・交響曲第3番
・交響曲第2番
指揮:マリン・オールソップ
管弦楽:ボーンマス交響楽団
録音時期:2003年7月20-21日
録音場所:イギリス、プール、ライトハウス・コンサートホール
http://ml.naxos.jp/album/8.559202

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“ミニマル・ミュージック”とは音の動きを最小限に抑えてパターン化された音型を反復させる音楽のことだそうで、でも作曲者本人がそのように分類されるのは嫌や言うてるらしいので、その辺の事は置いといて。2番シンフォニーの終楽章はブラスセクションの使い方はアメリカンなんだけど、それ以外でのある種の高揚感はドビュッシーの『海』ラストの「風と海との対話」や『夜想曲』第2曲の「祭」とかを少し連想させるかな、という印象を持ちましたけど、グラスはジュリアード音楽院を卒業した後に渡仏してナディア・ブーランジェに師事したことがあるそうで、そのあたりはフランス印象主義の影響なのかもしれませんね。
そしてディスクでは2番の前に置かれた3番シンフォニー。弦楽セクションだけによる演奏ですが、楽器編成と作曲書法に制約があるにもかかわらず、微妙なパターン変化の妙味や色彩感など、よくもまあこれだけ表現できるものだと感心しました。この辺りは作曲者本人と交流のあったオールソップの処理の巧さもあるのかな、という気がします。ただ叙情的な美しさだけでなく、そこかしこに紛れている小さな変化球っぽいのが上手い具合に隠し味になっているような印象でした。

 


 

オールソップとボーンマス響のコンビによるグラス作品の録音は2曲収録されたディスクがもう1枚存在します。まず『The Light』と題された曲はマイケルソン・モーリーの実験(1887年にアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーの2人の米国人物理学者によって行なわれた実験、内容を知りたい方はウィキペディアの解説をどうぞ)にインスパイアされた曲なのだそうですが、あまり深いこと考えずに聴いた方がいいかもです(をい)。

そして、『Heroes Symphony』と題された交響曲第4番はアンビエント・ミュージック(環境音楽)の先駆者として知られるブライアン・イーノがシンセサイザー&キーボード奏者として参加したデヴィッド・ボウイの11枚目のアルバム『Heroes』(邦題では「英雄夢語り」?今はそのまんま「ヒーローズ」かな?)のボーナストラック入り1991年盤を下敷きにした全6楽章からなる交響曲です。
私は洋楽ロックには疎いのでデヴィッド・ボウイも名前を知ってる程度で彼名義のアルバムも残念ながら聴いたことがないのですが、1977年リリースの『Heroes』のタイトルチューンとなっている曲はボウイがベルリンの壁の傍で落ち合う恋人達の姿を見て着想を得たエピソードがあるそうで、冷戦期で東西に分裂していた当時のドイツの状況を思い起こしながら聴いていると、このシンフォニー全体を覆うモンヤリした閉塞感や寂寥感、シニカルさといった雰囲気が窺えるのも納得のいく印象でした。

 

フィリップ・グラス:交響曲第4番『ヒーローズ』、他/マリン・オールソップ&ボーンマス響【NAXOS】
フィリップ・グラス
・ザ・ライト
・交響曲第4番『ヒーローズ』〜デヴィッド・ボウイとブライアン・イーノの音楽より
指揮:マリン・オールソップ
管弦楽:ボーンマス交響楽団
録音時期:2006年5月16-17日
録音場所:イギリス、プール、ライトハウス・コンサートホール
http://ml.naxos.jp/album/8.559325