モンテヴェルディの『聖母マリアの夕べの祈り』の次に紹介するのは、時代やら作風やら180度ガラッと変わって(笑)、バーンスタインがワシントン・ケネディ・センターのこけら落としとジョン・F・ケネディ元大統領追悼のために作曲したミサ曲です。
★バーンスタイン:ミサ曲/オールソップ&ボルティモア響、他(2CD)【Naxos】
レナード・バーンスタイン
・ミサ曲〜歌手、踊り手、演奏家のためのシアター・ピース
指揮:マリン・オールソップ
管弦楽:ボルティモア交響楽団
司祭(バリトン):ジュビラント・サイクス
ボーイ・ソプラノ:アッシャー・エドワード・ウルフマン
合唱:ピーボディ児童合唱団、モーガン州立大学合唱団
録音時期:2008年10月21,22日
録音場所:ボルティモア、ジョセフ・マイヤーホフ・シンフォニー・ホール
→http://ml.naxos.jp/album/8.559622-23
同時期にティルソン=トーマスとサンフランシスコ響によるマラ8という超強力なライバル盤があったおかげで受賞こそ逃しましたけど、第52回グラミー賞のクラシック部門にベストアルバムとしてノミネートされていたディスクです。
そして、グラミー賞にベストアルバムとしてノミネートされるだけの、聴き手の魂を強く揺さぶる充実した演奏がここにはあります。
ブルースにロックに黒人霊歌にゴスペルに等々、クラシックの枠に収まらない多彩なジャンルの音楽が綯交ぜになっている一風変わったミサ曲ですけど、司祭役のサイクスがエレキギター片手に歌うシンプル・ソングにしびれさせられるだけでなく、オケとコーラスを完全に掌握して情熱的に引っ張っていくオールソップのタクトによる演奏は、セッション録音とは思えないライヴ特有の熱気をはらんでいます。
ベトナム戦争の最中に作曲され、単なる追悼にとどまらず反戦や平和への希求など当時の社会風潮をバーンスタインなりに取り込んだ曲だそうですが、そのバーンスタインに師事したことがあるというオールソップは、この曲が内包するメッセージ性を充分理解した上でセッションに臨んだのでしょうし、異色の音楽ながら強い説得力を持っているのも彼女の的確な解釈ゆえだと思います。