8月1日付で登録公開されたナクソス・ミュージック・ライブラリでのNAXOSレーベルの新譜、アダム・フィッシャーがデンマーク室内管弦楽団とはじめたハイドン後期交響曲の再録音第1弾とともに注目したいのが、アメリカの現代作曲家ジェニファー・ヒグドンの『デュオ・デュエル』『管弦楽のための協奏曲』を収録したアルバムです。
★ジェニファー・ヒグドン:デュオ・デュエル、管弦楽のための協奏曲/ロバート・スパーノ&ヒューストン交響楽団【NAXOS】
ジェニファー・ヒグドン
・デュオ・デュエル
・管弦楽のための協奏曲
指揮:ロバート・スパーノ
管弦楽:ヒューストン交響楽団
録音時期:2022年5月6-8日(デュオ・デュエル)、2015年4月17-19日(管弦楽のための協奏曲)
録音場所:テキサス州ヒューストン、ジェシー・H・ジョーンズ・ホール
→https://ml.naxos.jp/album/8.559913
“管弦楽のための協奏曲”――日本では“オケコン”と略するファンもいますね――という名のついた曲というかジャンルは、超有名なバルトークの最高傑作を筆頭に、ルトスワフスキ、ヒンデミット(“管弦楽のための協奏曲”の創始者で1925年に作曲)など20世紀から21世紀にかけて数多くの作曲家が手掛けていますが、ヒグドンのオケコンは21世紀の再工作の1つになるであろう可能性を秘めていると思います。
この曲の存在を知ったのは、京響の常任指揮者に就任して間もない頃の広上淳一さんが、当時掛け持ちでシェフを務めていたアメリカのコロンバス交響楽団で定期演奏会のプログラムに載せていたのを見つけた時で、アメリカの有名な女性作曲家がどんな“オケコン”を作ったのだろう?と興味が湧いたものの、その頃はナクソス・ミュージック・ライブラリを探しても見つからなかったので、記憶を頭の片隅に置いたままにしていたのでした。
それから随分と経って2020年、世界中でコロナ禍が始まってクラシック業界も1度パッタリと活動を止めていた際、『ライヴ』を欲してYouTubeで演奏会の様子を配信しているオーケストラや歌劇場を探しまくっていた時に、偶然スペインのガリシア交響楽団が演奏しているのを見つけまして、一発で気に入りました。実力的にはヒューストン交響楽団と比べるとガリシア交響楽団は少し格落ちかも知れませんが、ヒグドンの作品を積極的に採り上げているらしいロバート・スパーノの手腕で素晴らしい演奏を見せています。
実力者揃いの京響が演奏したらさぞかし映えそうだなと期待したいところですが、この曲をプログラムに乗せてくれそうな指揮者がいるのかとなると・・・?何かの気まぐれで広上さんがやらなかったら、誰もやらなそうで・・・
ジョン・アダムズの『ハルモニーレーレ』ですら、下野さんが6年前に京響定期で振ったのが日本で3回目だったかな?後々になってベルリン・フィルがネット配信しているデジタル・コンサートで、作曲者自身がベルリン・フィルを指揮しているのを観ましたが(自作自演するタイプではなかったらしいジョン・アダムズが初めて指揮棒を振った演奏会だったらしい…それこそ指揮はド初心者で総譜を捲りながら拍子を正確に刻むのがやっとこさなアダムズをベルリン・フィルがサポートしながら良い演奏に仕上げていった印象)、格の大きな違いというのを改めて実感したものでした。
ヒグドンのオケコンは『ハルモニーレーレ』ほど難曲というわけでもなさそうなので、腕に自信のある日本のオケがどこかやらないかなぁ〜と思う次第です。
もう1つの注目盤、こちらは古典中の古典ですが、アダム・フィッシャー35年ぶりの再録音、円熟味が増した指揮者と、オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団とはまったくタイプの異なるデンマーク室内管弦楽団の組み合わせ、意外な化学反応を起こしてて興味深い、かつ素晴らしい演奏になってます。こちらも超オススメ。
★ハイドン:後期交響曲集Vol.1―交響曲第93・94・95番/アダム・フィッシャー&デンマーク室内管【NAXOS】
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
・交響曲第93番 ニ長調 Hob. I:93
・交響曲第94番 ト長調『驚愕』 Hob. I:94
・交響曲第95番 ハ短調 Hob. I:95
指揮:アダム・フィッシャー
管弦楽:デンマーク室内管弦楽団
録音時期:2022年9月2-6日・11月14日
録音場所:デンマーク、王立音楽アカデミー・コンサートホール
→https://ml.naxos.jp/album/8.574516