エルガー:オラトリオ『使徒たち』(+『ゲロンティアスの夢』『神の国』)/エルダー&ハレ管、他

ハレ管の自主レーベルから今日付で新譜が2種類登録されました。ワーグナーの『ワルキューレ』にエルガーの『使徒たち』といずれも大作です。
前者(→http://ml.naxos.jp/album/CDHLD7531)に関してはリング4部作が出揃った時にでも回すとして(ちなみに4部作としては『神々の黄昏』に次いで2作目)、今回はエルガーのオラトリオ『使徒たち』について少し触れてみたいと思います。

 

エルガー:オラトリオ『使徒たち』/エルダー&ハレ管、他【Hallé】

エドワード・エルガー
・オラトリオ『使徒たち』 Op.49
指揮:サー・マーク・エルダー
管弦楽:ハレ管弦楽団
ソプラノ:レベッカ・エヴァンス
メゾソプラノ:アリス・クート
テノール:ポール・グローヴス
バリトン:ジャック・インブライロ、デヴィッド・ケンプスター
バス:ブリンドリー・シェラット
合唱:Chorus of Apostles、ハレ合唱団、ハレ・ユース合唱団
録音:2012年5月5日、マンチェスター、ブリッジウォーター・ホール(ライヴ)
http://ml.naxos.jp/album/CDHLD7534
Cdhld7534

 

このライヴ収録の後に今年のプロムスでも8月10日に演奏されたそうですが(ソリストに若干の変更あり)、これまでハレ管の自主レーベルから交響曲2曲とエニグマ変奏曲、オラトリオ2曲を世に出してきたこのコンビが、おそらく万全の準備を整えて臨んできたことは想像に難くありません。
2部構成で2時間にもわたる大作、イエスの受難をマグダラのマリア、弟子たちを交えて描いた受難曲のような内容で、私も全く初めて聴いたのですが、歌詞の意味すらまともに追えていないにもかかわらず音楽の深淵にいつの間にか引き込まれる凄みがありました。さすがエルダーの手腕とハレ管の実力といったところでしょうか。
第2部に入るとユダによる裏切り行為やイエスの捕縛といった流れになっていくので、第1部に比べて音楽も劇的な場面が多くなるのですが、それらを全て乗り越えた後の‘They platted a crown of thorns’と題された終曲が、何ものをも浄化し昇華していくような美しさを湛えていて、クリスチャンではない私が聴いてもとても感動的で心に深く印象に残る音楽でした。

12月、日本のクラシック界ではこれから各地で年末にかけてベートーヴェンの第九が盛んに演奏される時期で、クラシックファンにもこの時期に第九を聴かないと・・・という人を多々見かけるのですが、私はクリスマスが近づくにつれて宗教音楽に身を浸らせてみたい気持ちになります。日本人感覚で言うならお祓いとかお浄めといったところでしょうか?(笑) 今回『使徒たち』の素晴らしい演奏に接することができましたので、折を見て『ゲロンティアスの夢』や『神の国』といったエルガーの他のオラトリオもじっくり聴いてみたいと思います。

 


 

先にも少し書きましたが、ハレ管の自主レーベルからは既にエルガーの主要曲、交響曲2曲にオラトリオ『ゲロンティアスの夢』、『神の国』の録音もリリースされています。メジャーレーベルから出ているわけではないのでなかなか目に触れる機会も多くはないのでしょうけど、昨今現地で受けているエルダーとハレ管のコンビの評価の高さから鑑みても、過去のいわゆる名盤にも伍することのできる演奏だと思われます。先にリリースされているエルガーのオラトリオ2曲をここに併せて挙げておきます。

 

エルガー:オラトリオ『ゲロンティアスの夢』/エルダー&ハレ管、他【Hallé】

エドワード・エルガー
・オラトリオ『ゲロンティアスの夢』 Op.38
指揮:サー・マーク・エルダー
管弦楽:ハレ管弦楽団
メゾソプラノ:アリス・クート
テノール:ポール・グローヴス
バリトン:ブリン・ターフェル
合唱:ハレ合唱団、ハレ・ユース合唱団
http://ml.naxos.jp/album/CDHLD7520
Cdhld7520

 

エルガー:オラトリオ『神の国』/エルダー&ハレ管、他【Hallé】

エドワード・エルガー
・オラトリオ『神の国』 Op.51
指揮:サー・マーク・エルダー
管弦楽:ハレ管弦楽団
ソプラノ:クレア・ラター
メゾソプラノ:スーザン・ビックリー
テノール:ジョン・ハドソン
バス:イアイン・ペイターソン
合唱:ハレ合唱団
録音:2009年10月17日、マンチェスター、ブリッジウォーター・ホール(ライヴ)
http://ml.naxos.jp/album/CDHLD7526
Cdhld7526