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“【2012年 生誕150年】フレデリック・ディーリアス特集”
というのが気になっていて、何かないかと探しているうちに見つけた、ちょっと面白い組み合わせのディスクです。秋真っ盛りのこの時期に春にちなんだCDを採り上げるのはどうかというツッコミはなしで(笑)。
★バックス:春の火、ディーリアス:春の牧歌、ブリッジ:狂詩曲「春の訪れ」、他
/マーク・エルダー&ハレ管【Hallé】
・アーノルド・バックス:交響詩『春の火』
・フレデリック・ディーリアス:春の牧歌
・フレデリック・ディーリアス:北国のスケッチ~第4曲「春の訪れ – 森と牧場と静かな荒地」
・フランク・ブリッジ:狂詩曲 『春の訪れ』
指揮:サー・マーク・エルダー
管弦楽:ハレ管弦楽団
録音時期・場所
・春の火:2010年3月18日 マンチェスター、ブリッジウォーター・ホール(ライヴ)
・春の牧歌:2010年10月14日 マンチェスター、ブリッジウォーター・ホール(ライヴ)
・「北国のスケッチ」第4曲、狂詩曲『春の訪れ』:
2010年6月23-24日 マンチェスター、新ブロードキャスティングハウスBBCスタジオ7
→http://ml.naxos.jp/album/CDHLL7528
1883年生まれのアーノルド・バックス、1862年生まれのフレデリック・ディーリアス、1979年生まれのフランク・ブリッジ。
世代も異なれば作風も異なる三者三様の曲の聴き比べができて面白かったです。
1曲目のバックスの『春の火』はライヴ収録で拍手もカットなしで入ってました。
熱狂的な拍手に混じって指笛が鳴らされるくらい観客からの受けがよかったようですが、実際の演奏も当然ながらそれに値するものだと思います。
それぞれに表題を与えられた5つの楽章(切れ目無し)で構成された曲ですが、静かにゆっくりと夢幻的な雰囲気で始まり最後は一気呵成にハッチャケて終わるパターンはどこかしらラヴェルの『ダフニスとクロエ』第3部を想起させるものがあります。
終楽章の表題「Maenads」はギリシャ神話でディオニューソスの女性信奉者とされるマイナス(英語名:Maenad)の複数形マイナデス。
印象主義を少し思わせる作風で、ファンタスティックかつダイナミズムあふれた音楽ですが、オペラ経験豊富なエルダーの指揮とあって表情付けが巧みですね。
終楽章のクライマックスに向けた流れに思わず聴きこまれてしまいました。
バックスは来年がメモリアルイヤー(生誕130周年&没後60周年)ですので、私が忘れてなければ(苦笑)jっ栗聞いて採り上げてみたいものですね。
そして、ディーリアスの2曲のうち、「春の牧歌」は彼の比較的初期の作品のようですが、録音がとても少ないみたいですね。昨秋EMIからリリースされた生誕150年記念の18枚組BOXにもこの曲は含まれていませんし、その点でもこの演奏は貴重な録音でしょう。
「北国のスケッチ」はこのディスクに収められた終曲だけでなく全曲をきちんと聴いてみたくなりました。
最後のブリッジの狂詩曲 『春の訪れ』。フランク・ブリッジはベンジャミン・ブリテンの師としても知られていますが、私は今回彼の曲を初めて聴きました。
『春の訪れ』約20分の単一楽章の曲ですが、とてもいいですね。
繊細なタッチながらも暗い冬を終え明るい春を迎えんとする高揚感の描写が壮大な印象で高ポイントでした。
エルダーとハレ管による丁寧で緻密な好演奏も、この曲にいっそうの彩を添えていると思います。