NMLには1週間ほど前からChandos[http://www.chandos.net/]レーベルの8000番台の古い録音のディスクが連日まとまって登録されているのですが(見たところどれも廃盤くさい)、これは題名のユニークさに釣られて試しに聴いてみたところ、曲は彩り豊かな印象の音楽でしたし、演奏の質もなかなかのものでしたので、ここに採り上げた次第です。
★ブリス:色彩交響曲、『チェックメイト』組曲/ヴァーノン・ハンドリー&アルスター管【Chandos】
アーサー・ブリス
・色彩交響曲
・『チェックメイト』組曲
指揮:ヴァーノン・ハンドリー
管弦楽:アルスター管弦楽団
録音時期:1986年3月25-27日
録音場所:ベルファスト(イギリス北アイルランド)、アルスター・ホール
→http://ml.naxos.jp/album/CHAN8503
北アイルランドの首都ベルファストを本拠に現在は米国人女性のJoAnn Falletta [http://www.joannfalletta.com/]が首席指揮者を務めているアルスター管弦楽団[http://www.ulsterorchestra.com/]。このオケの桂冠指揮者の称号を贈られているヴァーノン・ハンドリーが首席指揮者を務めていた時代(1985-90)に録音した演奏です。
アーサー・ブリス、1891年生まれの英国人作曲家で、アーノルド・バックスの後任で1953年から“英国女王(国王)の音楽師範”を亡くなる1975年まで務めていた人だそうですが、恥ずかしながら全然知りませんでした(苦笑)。色彩交響曲は彼の代表作の1つだそうで、欧州貴族社会の紋章学から色についての象徴性のインスピレーションを得て、ジャズにも触発されつつ音楽といくつかの色の関係を模索する“共感覚”的な発想で作曲されたとか。4つの楽章にはそれぞれ色が割り当てられていて、
・第1楽章:紫色。アメジストの色。ならびに壮麗さ・高貴さ・死の色
・第2楽章:赤色。ルビーの色。ならびに葡萄酒・酒宴・かまど(炉)・勇気・魔術の色
・第3楽章:青色。サファイアの色。ならびに深い水・空・忠義・メランコリーの色
・第4楽章:緑色。エメラルドの色。ならびに希望・青春・幸福・春・勝利の色
とされているのですが、日本人の色彩感覚でイメージするだけ無駄でしょうから(そもそも欧州の紋章学に相応する概念や体系が日本にはありませんからね)、イギリスをベースに少しフレンチ・テイストも混じって、ホルストの『惑星』とはまた違った毛並みの彩りあるオーケストレーションに富んだ美しい音楽と大雑把に捉えて聴いた方が取っつきやすいかと思います。
そして、カップリングの『チェックメイト』組曲ですが、これはチェスのチェックメイトに至るゲーム進行、あるいはゲームをする人間の心理描写を音で表現したバレエ音楽を作曲者自身が組曲に編成し直したもので、なかなかにドラマティックでリズム感の歯切れ良さが光る音楽です。中でも「チェックメイト」と題された終楽章はブラスセクションとパーカッションが大活躍する映画音楽さながらのカッコいい曲という印象でした。
ハンドリーとアルスター管による演奏は堅実ながらもブリス独特の彩りよい美しさとエキサイティングな音楽性を丁寧に表現していて、とても好感の持てる質の高い仕上がりになっていると思います。ディスクでの入手は難しいかもしれませんが、NMLに加入されている方はぜひ聴いてみてください。
・・・これ、2曲とも、今の広上=京響コンビなら上手くハマりそう・・・まぁ作曲者の認知度からして定期で採り上げる可能性はほぼゼロに近いでしょうけど・・・。