今度のグラミー賞にノミネートされているディスクの中で戦争をテーマにした作品(カルマー&オレゴン響)を以前に採り上げたことがありましたが、ダラス交響楽団[https://www.dallassymphony.com/]の自主レーベルからリリースされているもので、グラミー賞のベスト・コンテンポラリー・クラシカル・コンポジション部門にノミネートされている下記のディスクも、ある意味では戦争をテーマにした作品と言えなくもないと思います。
★スタッキー:オラトリオ『1964年8月4日』/ズヴェーデン&ダラス響、他【DSO Live】
スティーヴン・スタッキー
・オラトリオ『1964年8月4日』
1. 最も悲しい瞬間
2. 史学者たち
3. 大統領執務室I
4. 私は戦いの一部になりたい
5. アメリカの隠れた本心
6. 大統領執務室II
7. 悲歌
8. ミシシッピからの手紙
9. 大統領執務室III
10. 8月4日
11. 知っていたら
12. 大切なのは忘れぬこと
指揮:ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン
管弦楽:ダラス交響楽団
合唱:ダラス交響合唱団
ソプラノ:インディラ・マハジャン
メゾ・ソプラノ:クリスティーネ・イェプソン
テノール:ヴェール・ライドアウト
バリトン:ロッド・ギルフリー
録音時期:2011年5月(ライヴ)
録音場所:ダラス、マクダーモット・コンサート・ホール
→http://ml.naxos.jp/album/dsolive004
アメリカの現代作曲家スティーヴン・スタッキー[http://www.stevenstucky.com/]が第36代大統領リンドン・ベインズ・ジョンソンの生誕100年を称えるために書いたオラトリオで2008年9月18日に初演された作品だそうですが、英語のヒアリング能力不足で歌詞の内容が聞き取れない私が聴いても相当にヒネリの効いた音楽だと思えます。
ショスタコーヴィチがスターリン時代やブレジネフ時代にやった手口と似たようなものと言えるでしょうか。
1964年8月4日というのはトンキン湾事件があった日で、これを機にアメリカが本格的にベトナム戦争に突入していくわけですが、ラストで静寂かつ粛々と流れて消えていく様相はジョンソン元大統領に向けてというよりもベトナム戦争で犠牲になった(国籍問わず)全ての戦没者へのレクイエムに思えます。
・・・ググったら歌詞見つかるかなぁ?歌詞の内容がどんななのかマジで興味深い・・・
ついでに半ば勘ぐりで言うと、この曲が初演された時期ってのがブッシュJr.とオバマが対決した大統領選の終盤の頃なんですよね。
そしてこのCDがリリースされたのも大統領選があった昨年のこと。いやぁ〜、思想・表現の自由権って有難いものですね、本当に(しみじみ)。
閑話休題。
演奏はというかオーケストラの方に目を移すと、アメオケらしいシャープで機能美なサウンドですが、音楽監督のヤープ・ヴァン・ズヴェーデンの趣向なのか、クリアで繊細な部分も損なうことなく多彩な表現かつ整理の行き届いた演奏という印象です。
全体的に鍛えぬかれて統率のよくとれた感があり、随所に見られる緊迫した場面での演出も見事だと思います。コーラスもよく健闘しているのではないでしょうか。
初めて聴いた曲でしたけど、おかげで充実した音楽を体感できた気がします。