ドヴォルザーク:スターバト・マーテル/ネーメ・ヤルヴィ&ロンドン・フィル、ズデニェク・マーツァル&ニュージャージー響

京響の第571回定期がいよいよ明後日と迫ってきました。広上さんの指揮でドヴォルザークの『スターバト・マーテル』、久々の大曲(大野さんとのマラ3以来・・・かな?)なだけに大いに楽しみなのですが、チケットもまたまた完売御礼でなによりです。これで今年度は4月から連続して完売御礼、開幕16連勝でプロ野球記録を更新したマー君には負けていられません(をいwww)。

34歳を迎えた1875年に長女を、その2年後には長男と次女を相次いて亡くす大きな悲劇に遭遇したドヴォルザークが、亡き子どもたちの冥福を祈る一心で作曲されたというスターバト・マーテル。そこには彼の他の多くの作品に見られるチェコ人としての姿は影を潜め、敬虔なカトリック教徒としてのドヴォルザークが全面に現れた崇高な美しい音楽に溢れています。

クーベリックとバイエルン放送響によるグラモフォン盤など名盤も多いこの曲ですが、私がNMLのカタログから選んで聴いたのは下記の2種の録音です。

まず1つ。ロンドン・フィル[http://www.lpo.co.uk/]の自主レーベルからリリースされている、ネーメ・ヤルヴィ指揮のライヴ盤。普通なら演奏時間が優に80分を超える(ゆえに他の曲とカップリングさせて2枚組でリリースされるのがほとんど)この曲が1枚のディスクに収まっているのは、第1曲の“Stabat Mater dolorosa(悲しみに沈める聖母は)”が14:00と他に比して極端に速いからなのですが、数字で示されているほどには違和感を感じませんでした。ライヴ特有の熱気のこもった演奏で、特にラストの第10曲“Quando corpus morietur(肉体は死して朽ち果てるとも)”で合唱が入ってきて「paradisi gloria. Amen.」と歌い上げてから合唱のみで「Quando corpus morietur ・・・」の一節を歌う部分は壮大なクライマックスが築きあげられていて、合唱の gloria! にブラスセクションの咆哮が重なるところなど聴いていてもゾクゾクさせられます。オケの熱演ぶりに合唱と独唱陣もハイレベルで文句なしです。この2010年10月9日にロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールで催された演奏会には当時在欧の日本人で直接聴きに行かれた方もいらっしゃるようですが、録音を通しても会場にいた聴衆の満足度がわかるような気がします(※注:拍手はカットされてます)。

もう1つ、敢えてマイナーな米国の地方オケによる演奏を採り上げてみました。今年で設立40周年を迎えたハリウッドのDelos[http://delosmusic.com/]レーベルから1994年にリリースされたディスクで、ズデニェク・マーツァルとニュージャージー交響楽団[http://www.njsymphony.org/]のコンビによる演奏です。1992年から2003年にかけて音楽監督を務めたチェコ人指揮者のマーツァルによってニュージャージー響の実力と評価が大きく向上したそうで、Delosに残した録音の中にはグラミー賞を受賞したディスク(ドヴォルザークのレクィエムと9番交響曲を収録した2枚組CDで2000年のクラシック・ベストエンジニア部門)もあります。ドヴォルザークの作品99『聖書の歌』とカップリングされたスターバト・マーテルはマーツァルがシェフに就任して間もない頃の録音ですが、後の黄金期を予感させる高水準の演奏だと思います。さすがにビッグ5+ロス・フィル&サンフランシスコ響レベルには及ばないものの、緻密なアンサンブルとドヴォルザークの作品に真摯にリスペクトする姿勢は聴き手にも充分伝わってきますし、録音も良好です。合唱も全米での有名どころを起用しているだけあって素晴らしく、独唱陣にも特に穴は見当たらないのではないでしょうか。メジャーオケですら破産の憂き目に遭う厳しい経済状況の中で一地方オケのニュージャージー響も例外ではないようですが(現時点のメンバー表を見たら2管編成クラスの人数しかいないし)、なんとか頑張って踏みとどまってほしいと願わずにはいられません。

 


 

ドヴォルザーク:スターバト・マーテル/ネーメ・ヤルヴィ&ロンドン・フィル、他【LPO】
アントニン・レオポルト・ドヴォルザーク
・スターバト・マーテル Op.58, B.71
指揮:ネーメ・ヤルヴィ
管弦楽:ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
合唱:ロンドン・フィルハーモニー合唱団
ソプラノ:ジャニス・ワトソン
メゾ・ソプラノ:ダグマル・ペツコヴァ
テノール:ピーター・オーティ
バス:ピーター・ローズ
録音時期:2010年10月9日(ライヴ)
録音場所:ロンドン、サウスバンク・センター、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
http://ml.naxos.jp/album/LPO-0062

 


 

ドヴォルザーク:スターバト・マーテル、聖書の歌/マーツァル&ニュージャージー響、他【Delos】
アントニン・レオポルト・ドヴォルザーク
・スターバト・マーテル Op.58, B.71
・聖書の歌 Op.99 B.185
指揮:ズデニェク・マーツァル
管弦楽:ニュージャージー交響楽団
合唱:ウェストミンスター交響合唱団
ソプラノ:カーレン・エリクソン
メゾ・ソプラノ:クロディーヌ・カールソン
テノール:ジョン・エイラー
バス:ジョン・チーク[スターバト・マーテル]、マンフレード・ヘム[聖書の歌]
http://ml.naxos.jp/album/DE3161