1904年5月26日生まれのヴラド・ペルルミュテール、私が最も敬愛するピアニストの1人である彼の、108回目の誕生日にあたります。
最晩年に英Nimbusレーベルに多数の録音を残したペルルミュテールのディスクから、とりわけ気に入っているものを挙げてみたいと思います。
★ショパン:ピアノ・ソナタ第2番・第3番、舟歌/ヴラド・ペルルミュテール【Nimbus】
フレデリック・ショパン
・ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
・ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
・舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
ピアノ:ヴラド・ペルルミュテール
→http://ml.naxos.jp/album/NI5038
構築美を保ちながらもロマンティックで味わい深い3番のソナタも素晴らしい演奏なのですが、何と言ってもバルカロールが大変に素晴らしい!私がこれまで録音なり生演奏なりで接したショパンの演奏の中で、これ以上のものは無いし今後出会うことも無いだろうと言い切ってしまっても良いほどです。
かつてアドリア海の女王と称される栄華を誇った水の都ヴェネツィア、彼の地の運河で静かにたゆたうゴンドラの映像がセピア色でパァ~っと目の前に浮かぶような、そんな演奏です。古いスタイルの演奏だと言うなら言わせておこう、しかしこの演奏のように、濃厚なロマンテッィク漂う雰囲気をスコアの構造を崩すことなく海の波間のような弾き方で表現できることは、名手であっても困難でしょう。
一般にはラヴェルの解釈で評価されるペルルミュテールですが、私は彼のショパンがラヴェルよりもずっと好きです(というか大人になってフランス国籍を取得したとはいえペルルミュテールは元々ポーランド系ユダヤ人だそうなので)。
そしてその中でも、バルカロールは特別の存在です。
作品60番前後以降のショパンは作曲家として一際高い境地に上っていると感じることがありますが、ペルルミュテールのバルカロールはそのことを最も証明してくれる演奏だと思います。