ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容、ヴァイオリン協奏曲、他/クリストフ・エッシェンバッハ&北ドイツ放送響、五嶋みどり(ヴァイオリン)

NMLに
第56回グラミー賞 ノミネート作品
というページが新しくできてまして、来月に授賞式が行われる次のグラミー賞にノミネートされた作品の中から、NMLに登録されてあるディスクをまとめて紹介してあるのですが、その中から個人的にちょっと注目してみたいものの1つがこのヒンデミット管弦楽作品集。彼の没後50年を記念してOndineレーベルが企画してリリースしたそうですが、このディスクに収録されているヴァイオリン協奏曲のソリストが、なんと五嶋みどり[http://www.gotomidori.com/]さん! 市場に出回っている彼女の録音はソニー・クラシカルのものばかりでしたから、まさか北欧のマイナーレーベルで聴けるとは思ってもみませんでした。バックもエッシェンバッハ指揮の北ドイツ放送交響楽団ですから、これは注目せざるを得ません。

 

ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容、ヴァイオリン協奏曲、弦楽と金管のための協奏音楽
 /クリストフ・エッシェンバッハ&北ドイツ放送響、五嶋みどり(ヴァイオリン)
【Ondine】
パウル・ヒンデミット
・ウェーバーの主題による交響的変容
・ヴァイオリン協奏曲
・弦楽と金管のための協奏音楽 Op.50
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
管弦楽:北ドイツ放送交響楽団
ヴァイオリン:五嶋みどり
録音時期:2012年10月24,26日、2011年12月23日[弦楽と金管のための協奏音楽]
録音場所:ハンブルク、ライスハレ(ライヴ)
http://ml.naxos.jp/album/ODE1214-2
Ode12142

 

1曲目から順に1943年、1939年、1930年に書かれた作品。この内で唯一作品番号がふられている『弦楽と金管のための協奏音楽』はボストン交響楽団創立50周年記念の委嘱作品だそうです。初めて聴いた曲でしたが、文字通りブラスセクションが大活躍する華やかな音楽で、今の京響がやってもなかなか面白いのではないかと思います。
3曲中もっとも有名な『ウェーバーの主題による交響的変容』を筆頭にヒンデミットの新即物主義な傾向に沿うようなマッチングをエッシェンバッハ&北ドイツ放送響のコンビは見せていますが、注目のヴァイオリン協奏曲はというと、ソリストである五嶋さんのヴァイオリンはやや線が細いというか華奢な印象を受けましたが、それでも馬力のあるオケである北ドイツ放送響を相手に全く埋もれない存在感はさすがです。技巧の見事な冴えもさることながら、ヒンデミットの作品の特徴をよく捉えてドライな音色での演奏に徹しつつ多彩な表情を見せているのも高ポイントですね。オケもそうですが、これだけパーフェクションな演奏を見せつけておいて、セッションでなくライヴ収録というのですから、プレイヤーたちのレベルの高さが窺えます。

そういえば、録音ではソニーのブランドイメージがあった五嶋みどりさんですが、新規の録音がしばらく途絶えているようだと思って少し調べてみたら、今年になって上記のディスクの他にOnyx[http://www.onyxclassics.com/]レーベルからブロッホとヤナーチェク、ショスタコーヴィチの3人の作曲家のヴァイオリン・ソナタをカップリングしたディスクも出していたのですね。オイストラフの60歳の記念に書かれたというショスタコーヴィチの作品134のソナタにブロッホ、ヤナーチェクと3曲とも20世紀に生み出された作品をズラッと並べてますが、ここでも彼女のヴァイオリンは3人の個性に沿うような形で深遠な音楽を奏でています。もしかしたらソニーとの契約はもう切れているのでしょうか?だとするなら、今のメジャーレーベルではこういった曲選でのディスクは作らせてもらえそうにないので、メジャーレーベルからフリーになったのであればクラシックファンとしては大いにありがたいですけどね(買う側に輸入盤をチェックできるスキルがあれば、ですがw)。

〔※2014年1月27日追記〕
ベスト・クラシカル・コンペンディアム部門でこのディスクが見事にグラミー賞を受賞しました!
五嶋みどりさん、そしてマエストロ・エッシェンバッハと北ドイツ放送交響楽団の皆様、おめでとうございます!

 

ブロッホ、ヤナーチェク、ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン・ソナタ集/五嶋みどり(ヴァイオリン)【Onyx】
エルネスト・ブロッホ
・ヴァイオリン・ソナタ第2番『神秘の詩』
レオシュ・ヤナーチェク
・ヴァイオリン・ソナタ JW.VII-7
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ
・ヴァイオリン・ソナタ Op.134
ヴァイオリン:五嶋みどり
ピアノ:オズガー・アイディン
録音時期:2012年8月19-22日
録音場所:ケルン、WDR(西ドイツ放送局)フンクハウス・オイローパ、クラウス・フォン・ビスマルク・ザール
http://ml.naxos.jp/album/ONYX4084