シモーネ・ヤングとバイロイト音楽祭、ニーベルングの指環、ブルックナー

「災い転じて福となす」…元は「禍を転じて福と為す」、中国の昔の歴史書にあった一節から広まったそうで。

ワーグナーの代表作でバイロイト音楽祭の一番の目玉でもある『ニーベルングの指環』、急遽登板して大好評だった昨年2024年に続いて今年2025年の音楽祭でもシモーネ・ヤングが指揮を担当します。
2022年から新しいプロダクションでの『ニーベルングの指環』ではピエタリ・インキネンを起用する予定だったのですが、開幕直前の7月になってインキネンがCOVID-19に感染しリハーサルもできないほど重い症状となったために、『トリスタンとイゾルデ』でバイロイトデビューする予定だったシュトゥットガルト州立歌劇場GMDのコルネリウス・マイスターに急遽依頼し、『トリスタンとイゾルデ』はマルクス・ポシュナーに替わってもらったアクシデントがありました。
そして翌2023年、インキネンの代わりにフィリップ・ジョルダンが『ニーベルングの指環』を指揮し、2024年もジョルダンの予定にしていたはずをキャンセルされてシモーネ・ヤングが担当すると公表されたのが2024年1月のこと。
バイロイトでの女性指揮者初が2つ(バイロイト初登場は『さまよえるオランダ人』を指揮したオクサーナ・リーニフで『ニーベルングの指環』の指揮者としてはヤングが初めて)になって話題になったそうですが、性別関係なくシモーネ・ヤングはワーグナーを十八番にしていて実力・実績ともバイロイトにいつ呼ばれてもおかしくないくらいで、昨年の公演でも音楽面では好評だったようですし。

さて、そのシモーネ・ヤングがハンブルク州立歌劇場の音楽総監督を務めていた時期(2005−2015)に Oehms Classics レーベルで多くのライヴ録音をリリースしていましたが、代表作はブルックナーの交響曲全集とワーグナーの『ニーベルングの指環』でしょう。Blu-rayで映像を出してほしかったと惜しまれる『ニーベルングの指環』はさておき、ブルックナーのツィクルスは「ブルックナーの交響曲を採り上げるならできるだけ第1稿で」という近年のトレンド?形成に多大な貢献をしていると考えています。

「ブルックナーは初稿・第1稿で! マーラーは最終の最終稿で!」

これが私の今の持論でして、ブルックナーは最初にポンと出したのが少々荒削りでも一番ブルックナーらしさが出ていて、周囲の目を気にしすぎて改稿を重ねると大豆やオリーヴの搾り滓みたいなのになってダイナミズムが消えて面白くなくなる。マーラーは本人が世紀で指折りの実力指揮者だったこともあって、自身の実演の経験だったりウィレム・メンゲルベルクやブルーノ・ワルターら彼が信頼できる指揮者の経験からアドバイスを得たりして、試行錯誤を繰り返して最後で良いものを仕上げていく――第5・第6・第7交響曲で顕著に出ているのがそれ――。
京都市交響楽団がマーラーの第7交響曲を5年前の定期演奏会で採り上げた際に“高関健補筆版”を用いた経緯を知らされて、アバド&ルツェルンのライヴを視聴したとき以上に目から鱗のような感銘を受けた覚えがあります(とにかく‘バーンスタイン’・‘ユダヤ’の呪縛から解き放されるのが重要)。
ブルックナーに関しては、ヤング&ハンブルク・フィルの他にブロムシュテット&ライプツィヒ・ゲヴァントハウスやマルクス・ボッシュ&アーヘン響といった、初稿・第1稿で大いに練度の高いライヴ収録ディスクがほぼ同じ時期に相次いでリリースされた幸運に恵まれたのではないでしょうか。

閑話休題

旧暦新年祝にヤング&ハンブルク・フィルのブルックナー全集と『ニーベルングの指環』はいかがでしょうか?

 


 

ブルックナー:交響曲全集/シモーネ・ヤング&ハンブルク・フィル【OEHMS】(12CD)

アントン・ブルックナー
・交響曲第1番 ハ短調 WAB 101(1865/66年リンツ稿)
・交響曲第2番 ハ短調 WAB 102(1872年第1稿キャラガン校訂版)
・交響曲第3番 ニ短調 WAB 103(1873年第1稿)
・交響曲第4番 変ホ長調『ロマンティック』WAB 104(1874年第1稿)
・交響曲第5番 変ロ長調 WAB 105(1873-75年初稿)
・交響曲第6番 イ長調 WAB 106(1881年初稿)
・交響曲第7番 ホ長調 WAB 107(1881-83年初稿)
・交響曲第8番 ハ短調 WAB 108(1878年第1稿)
・交響曲第9番 ニ短調 WAB 109(1887-94年初稿)
・交響曲第0番 ニ短調 WAB 100(1869年稿)
・習作交響曲 ヘ短調 WAB 99(1863年稿)

https://ml.naxos.jp/album/OC633(第1番)
https://ml.naxos.jp/album/OC614(第2番)
https://ml.naxos.jp/album/OC624(第3番)
https://ml.naxos.jp/album/OC629(第4番)
https://ml.naxos.jp/album/OC689(第5番)
https://ml.naxos.jp/album/OC687(第6番)
https://ml.naxos.jp/album/OC688(第7番)
https://ml.naxos.jp/album/OC638(第8番)
https://ml.naxos.jp/album/OC693(第9番)
https://ml.naxos.jp/album/OC685(第0番)
https://ml.naxos.jp/album/OC686(習作交響曲・第00番)

指揮:シモーネ・ヤング
管弦楽:フィルハーモニカー・ハンブルク(ハンブルク州立歌劇場管弦楽団)

録音時期:2010年1月(第1番)、2006年3月12-13日(第2番)、2006年10月14-16日(第3番)、
    2007年12月1-3日(第4番)、2015年3月1-2日(第5番)、2013年12月14-16日(第6番)、
    2014年8月30日(第7番)、2008年12月14-15日(第8番)、2014年10月25-27日(第9番)、
    2012年5月20-21日(第0番)、2013年2月22-26日(習作)※全てライヴ録音
録音場所:ハンブルク、ライスハレ

 


 

ワーグナー:楽劇『ニーベルングの指環』/シモーネ・ヤング&ハンブルク州立歌劇場【OEHMS】(14CD-BOX)

リヒャルト・ワーグナー
・楽劇『ニーベルングの指環』(全曲)
 ・楽劇『ラインの黄金』
 ・楽劇『ワルキューレ』
 ・楽劇『ジークフリート』
 ・楽劇『神々の黄昏』

指揮:シモーネ・ヤング
管弦楽&合唱:ハンブルク州立歌劇場管弦楽団&合唱団
ヴォータン(バリトン):ファルク・シュトルックマン
ドンナー(バリトン):ヤン・ブッフヴァルト
フロー(テノール):ラディスワフ・エルグル
ローゲ(テノール):ペーター・ガイヤール
アルベリヒ(バリトン):ヴォルフガング・コッホ
ミーメ(テノール):ユルゲン・ザッヒャー
ファーゾルト(バス):ティグラン・マルティロシアン
ファーフナー(バス):アレクサンドル・ツィムバリュク
フリッカ(ソプラノ):カーチャ・ピーヴェック
フライア(ソプラノ):ヘレン・クォン
エルダ(メゾ・ソプラノ):デボラ・ハンブル
ヴォークリンデ(ソプラノ):ハ・ヤン・リー
ヴェルグンデ(ソプラノ):ガブリエーレ・ロスマニト[※ラインの黄金]
フロースヒルデ(メゾ・ソプラノ):アン=ベス・ソルヴァング
ジークムント(テノール):スチュアート・スケルトン
フンディング(バス):ミハイル・ペトレンコ
ジークリンデ(メゾ・ソプラノ):イヴォンヌ・ナエフ
ブリュンヒルデ(ソプラノ):デボラ・ポラスキ[※ワルキューレ、神々の黄昏]
フリッカ(メゾ・ソプラノ):ジャンヌ・ピランド
ヘルムヴィーゲ(ソプラノ):ミリアム・ゴードン=スチュアート
ゲルヒルデ(ソプラノ):ヘレン・クォン
オルトリンデ(ソプラノ):ガブリエレ・ロスマニト
ヴァルトラウテ(ソプラノ):マリア=クリスティーナ・ダミアン[※ワルキューレ]
ジークルーネ(ソプラノ):カーチャ・ピーヴェック
ロスヴァイセ(ソプラノ):レナーテ・シングラー
グリムゲルデ(メゾ・ソプラノ):アン=ベス・ソルヴァング
シュヴェルトライテ(アルト):デボラ・ハンブル
ジークフリート(テノール):クリスティアン・フランツ
ミーメ(テノール):ペーター・ガイヤール
さすらい人(バリトン):ファルク・シュトルックマン
アルベリヒ(バリトン):ヴォルフガンク・コッホ
ファーフナー(バス):ディオゲネス・ランデス
エルダ(アルト):デボラ・ハンブル
ブリュンヒルデ(ソプラノ):キャサリン・フォスター[※ジークフリート]
森の小鳥(ソプラノ):ハ・ヤン・リー
グンター(バリトン):ロベルト・ボルク
ハーゲン(バス):ジョン・トムリンソン
グートルーネ(ソプラノ):アンナ・ガブラー
ヴァルトラウテ(メゾ・ソプラノ):ペトラ・ラング[※神々の黄昏]
第1のノルン(アルト):デボラ・ハンブル
第2のノルン(ソプラノ):マリア=クリスティーナ・ダミアン
第3のノルン(ソプラノ):カーチャ・ピーヴェック
ヴェルグンデ(ソプラノ):マリア・マルキーナ[※神々の黄昏]

録音時期:2008年3月(ラインの黄金)・10月(ワルキューレ)、2009年10月18-22日(ジークフリート)、2010年10月(神々の黄昏)
録音場所:ハンブルク州立歌劇場(ライヴ)

https://ml.naxos.jp/album/OC925(ラインの黄金)
https://ml.naxos.jp/album/OC926(ワルキューレ)
https://ml.naxos.jp/album/OC927(ジークフリート)
https://ml.naxos.jp/album/OC928(神々の黄昏)

楽劇『ニーベルングの指環』全曲(14CD-BOX)

楽劇『ラインの黄金』(2CD)

楽劇『ワルキューレ』(4CD)

楽劇『ジークフリート』(4CD)

楽劇『神々の黄昏』(4CD)