1974年チューリッヒ生まれのスイス人でアルミン・ジョルダンの息子フィリップ・ジョルダン[http://www.philippe-jordan.com/]。親の七光りなどではなく地道に歌劇場の下積みから経験を重ねて、2009年シーズンからパリ国立オペラ[http://www.operadeparis.fr/]の音楽監督に抜擢されている他、ファビオ・ルイージの後任として2014-15シーズンからウィーン交響楽団[http://www.wienersymphoniker.at/]の首席指揮者を務めることが内定しているなど、真に将来を嘱望されている若手指揮者の1人ですね。
その彼が現在の手兵であるパリ国立オペラの座付きオケと演奏した3曲のモダンバレエ音楽(『牧神』は厳密には後付ですが)の録音が今日NMLに登録されていました。Naïve[http://www.naive.fr/]レーベルから今年初旬にリリースされたディスクですが、有名曲揃いなだけでなく指揮者とオケの実力を測りやすい類の曲でもありますので、早速聴いてみました。
★ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、ストラヴィンスキー:春の祭典、ラヴェル:ボレロ
/フィリップ・ジョルダン&パリ国立歌劇場管弦楽団【Naïve】
クロード・ドビュッシー
・牧神の午後への前奏曲
イーゴリ・ストラヴィンスキー
・バレエ『春の祭典』
モーリス・ラヴェル
・ボレロ
指揮:フィリップ・ジョルダン
管弦楽:パリ国立歌劇場管弦楽団
フルート:フレデリック・シャトー[牧神の午後への前奏曲]
録音時期:2012年5月
録音場所:パリ、オペラ・バスティーユ
→http://ml.naxos.jp/album/V5332
率直に言うと、色彩感豊かで洗練されたオケの響きは文句無し。そしてフィリップ・ジョルダンの指揮がとにかく抜群のキレを見せていて音楽作りが凄く上手いですね。オケとの相性も良さそうです。ハルサイやボレロでのクライマックスへのピークの持っていき方がナチュラルなのとリズム感の切れ味の良さでエキサイティングな演出になってますし、同時に緻密な部分も持ち合わせていて繊細なニュアンスへの配慮も怠りなくしっかりと成されている印象がします。
下手に何か細工をしようとすると途端に作為的なあざとさを曝け出す無様な結果になりがちですが、フレージングがナチュラルかつスムーズで、全体と細部のバランスを巧く保ちながら聴き手を自然に興奮の渦へと誘う、その手腕は見事と言う他なく、こうしたところはオペラハウスでの下積み経験があればこそなんだろうかと思いながら聴いていました。パリ国立オペラ音楽監督就任記念コンサートで演奏されたアルペン・シンフォニーのライヴ録音が各方面で高い評価を受けているのも頷けますね。
ちなみに、2009年11月に行われた就任記念コンサートでのリヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲のライヴ録音が下記のディスクです。さすがにドイツっぽさは微塵もありませんが、彼らがキャンバスに描いた風景は鮮やかな極彩色の迫力あるもので、独墺系の名盤とはまた違った趣きの魅力があると思います。
→http://ml.naxos.jp/album/V5233