先日の記事で今年のラ・フォル・ジュルネのテーマ「パリ、至福の時」にスペインの作曲家のアルベニスやファリャを巻き込むなんて・・・と書きましたが、スペインの音楽やサッカーが好きな者としてはやり過ごすのももったいないので(笑)、これを採り上げてみることにしました。
ルイス・フェルナンド・ペレス[http://www.luisfernandoperez.com/]、1977年マドリード生まれのピアニストで、ラ・フォル・ジュルネを主宰するルネ・マルタン氏をして「精彩に富んだこの難曲(イベリア)を、今、最も巧みに演奏するピアニスト」と激賞するほどで、過去の来日公演でも実際に生演奏を聴いた人たちからの評判も良かったようですし、ちょうど先月下旬にスペインのレーベルVerso[http://www.verso.es/]がNMLに参入してペレスの録音も登録されてあったので、聴いてみることにしました。
★アルベニス:『イベリア』全曲/ルイス・フェルナンド・ペレス(ピアノ)(2CD)【Verso】
イサーク・アルベニス
・組曲『イベリア』〜12の新しい印象
第1巻
1.エヴォカシオン
2.港
3.セビーリャの聖体祭
第2巻
1.ロンデーニャ
2.アルメリア
3.トリアーナ
第3巻
1.エル・アルバイシン
2.エル・ポーロ
3.ラヴァピエス
第4巻
1.マラガ
2.ヘレス
3.エリターニャ
・ナバーラ[※デオダ・ド・セヴラックによる補追完成版]
ピアノ:ルイス・フェルナンド・ペレス
録音時期:2006年3-4月
録音場所:マドリード、アルカラ・デ・エナレス音楽大学講義室
→http://ml.naxos.jp/album/VRS2045
・・・え〜と、こうして採り上げておいて何なんですが、このアルバム、今の日本では簡単には入手できないようですね。
カデンツァ[http://www.cadenza-cd.com/]やアリア[http://www.aria-cd.com/]のようなクラシック専門店で探してもらうか海外のクラシックCDショップから個人輸入するとかくらいしか手はなさそうです。
リリース自体は2007年なのですが、それから再プレスとかしてないんですかね?
そもそもVersoレーベルのCDも日本ではそう出回ってるようでもなさそうですし・・・う〜ん、わかりません。
ただ、ペレス自身は2009年頃から仏Mirare[http://www.mirare.fr/]でソレールやグラナドスの作品集やショパンのノクターンなどのディスクを出してますし、こちらのレーベルなら規模というか経営基盤もそれなりで日本でも入手しやすく録音の信頼性にも定評がありますので、『イベリア』の再録とかもしてくれへんかなぁ〜思いますが・・・。
それはさておき、私はこの曲をNaxosにあるギター編曲版で愛聴している変わり者なので、ペレスのピアノで聴いた時はあまりの雰囲気の違いに驚きました。
原曲のピアノ版って元々こんなのだったっけ?と思ったほどでしたが、たまたまつべにデ・ラローチャの演奏があった(ココ)のを見つけて聴いて、ペレスの演奏が異彩を放っているだけなんだなと妙な納得をした次第です(笑)。
ともあれ、一聴しての印象が(もちろん良い意味でですが)強烈です。
「セビーリャの聖体祭」ではまるで闘牛場で凛々しい立ち姿を見せるトレーロ・マタドールのような躍動感ある雰囲気を醸し出し、「港」やエリターニャでは燦然とした輝きとダイナミズムで聴き手を圧倒しながらも繊細さを損なうことがありませんし、ロンデーニャのような舞曲風の楽章で見せるキレのよいリズム感の冴えには、フラメンコを生み出したスペインの血の成せる技かと思わずにはいられません。全体的にシャープな技巧と雄弁な語り口で独特のピアニズムを思わせる演奏ですが、そこにあざとさを一切感じないのは流石と言うべきでしょう。
多少アクの強さはありますが、デ・ラローチャ女史の絶対的ともいえるオーソドックスなものから、たまには外れた良演で楽しむのも乙なものではないでしょうか。
それでもこの『イベリア』は他国のピアニストでは決して及ばない領域があることを思い知らされた演奏ではありました。
フラメンコギターの分野でパコ・デ・ルシアやビセンテ・アミーゴ、トマティートらが見せる独特の輝きとリズム感を他国の名手といえどなぞるのはほぼ不可能なのと同様なのでしょうね。
ちなみに、今回のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンではソロリサイタルで2日にわたって『イベリア』を弾く他にコンチェルトや室内楽での共演もあるようなので、機会のある方はぜひどうぞ。
→ルイス・フェルナンド・ペレスの公演スケジュール
http://www.lfj.jp/lfj_2013/performance/artist/detail/art_59.html