鈴木宗男周りはもちろんのこと、どういうわけか主にレフトウィングな人たちがプーチンのプロパガンダに乗せられて、アゾフ大隊を例に今のウクライナが極右やネオナチと言い募るのが目立ってるのですが、よくよく実態を調べてみると全然そうではないよ、というお話。
こと反ユダヤ主義に関しては、近年のウクライナは欧州で最も反ユダヤ的でない国であるという世論調査の結果が出ている。
Antisemitism in Europe: Ukraine turns out to be the most friendly to Jews https://t.co/T8alCppdQw
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
◆Antisemitism in Europe: Ukraine turns out to be the most friendly to Jews
【Ukrainian Jewish Encounter 2018年4月4日】
People in Romania, Lithuania, and Armenia are least willing to accept Jews as their fellow citizens
Only 5% of Ukrainians would not like to have Jews as their fellow citizens. This is the lowest level observed in all the countries of Eastern and Central Europe, as revealed in a report released on 28 March 2018 on the results of a survey conducted by the Pew Research Center (US).
The list of other countries that are the most friendly to Jews also includes Bulgaria, Serbia, Bosnia and Herzegovina, Croatia, and Latvia. Between 7% and 9% of adults in those countries do not accept Jews as their fellow citizens.
In Hungary and Russia, this figure is 14%, in Poland — 18%, and in the Czech Republic — 19%. The countries in Eastern and Central Europe that are the most unfriendly toward Jews are Romania (22%), Lithuania (23%), Armenia (32%).
この期におよんでウクライナの「ネオナチ」の脅威を叫ぶ人が散見されるが、ウクライナの極右の脅威は決して見過ごせない問題ではあるものの、過大評価は禁物であり、プーチンがプロパガンダに使っている今それをことさらに強調するのは致命的な誤りだと思う。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
しばしばウクライナの「ネオナチ」の筆頭格として挙げられるアゾフ大隊については、2014年以降にその組織化に最も貢献したのはユダヤ人オリガルヒのコロモイスキーだったことは今では誰もが知っていることだし、アゾフ大隊に入隊してロシア軍と戦っているユダヤ人さえいる。https://t.co/XZpxYjGvsn
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
アゾフ大隊は2014年以降にウクライナ国民軍に吸収されて以降はネオナチ的要素を表に出さなくなったようで、16年には米議会がアゾフ大隊に対する武器供与を禁じる法律を撤廃。SWCやイスラエル極右はこの措置に反発したが、ウクライナのユダヤ人議会はこれをむしろ歓迎した。https://t.co/y7KGFjozRP
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この問題も重要なので、もう少し掘り下げてみたいところだが、私の知る限り、「ウクライナの極右の脅威」が当初思われたほどでなかったことは、すでに2014年の時点でかなり明らかだったことはあらかじめ伝えておきたい。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
2014年の時点で、ウクライナの極右とされた政党や団体は、自分たちが反ユダヤ主義者ではないことを示すために四苦八苦している様子が見てとれた。こうした努力が単なるパフォーマンスであった可能性も否定できないが、ロシアとの戦いで欧米の支持が得られなくなるのは得策ではないと認識したのだろう。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
あと、もう一点あらかじめ強調しておきたい点として、ユダヤ人であるゼレンスキー大統領がロシアとの戦いで一丁目一番地で非常によくやっていることで、ウクライナ極右も含めたウクライナ国民の対ユダヤ人観に劇的な変化が生まれつつあることは容易に想像できるし、実際そうした変化の兆は散見される。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
ていうか、ロシアとの間で生じた戦争の力学により、ウクライナ極右が抱える問題がアジェンダとしては相対的/総体的に低くなったのではないかということは、少し考えればわかるというものではなかろうか。殊にプーチンがまたぞろ「ネオナチと闘うオレ」ポーズを蒸し返して全面戦争までおっ始めた今や。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
もう一点、2014年から続くプーチンとの戦争の最中、世界中のユダヤ人の間で、「ウクライナの極右の脅威」を一番過小評価してきたのが他ならぬウクライナ在住のウクライナ人だったことが如実に物語っている。事が起きたら一番被害を被る人達が、本当に脅威に感じていたら、そんなことは言うはずがない。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
<「水面下の代理戦争――ユダヤ・ファクターから見たウクライナとロシアの動向」『現代思想』2014年7月号より>未だに「ウクライナの極右の脅威」を煽る言説が散見されるので、私がまだ「現役」の研究者だった2014年の時点でこのテーマに触れた部分だけ掲載することにします。ご参考になれば幸いです。 pic.twitter.com/3tM98Yi6n1
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
【訂正】115頁下段に「ロシアは約一九万四〇〇〇人(一・四パーセント)で世界六位、ウクライナは約六万七〇〇〇人(一・五パーセント)で一二位」とありますが、正しくは、「一・四」→「〇・一四」、「一・五」→「〇・一五」です。 pic.twitter.com/yss1hVlRYy
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
ちなみに、この続編ともいうべき、2014年から現在までのウクライナとロシア(そしてイスラエル)との関係におけるユダヤ・ファクターの変遷に関する論考を執筆中なのですが、何しろ個人事業主をやりながらなので、前に書いたものほどのボリュームのものはとても書けそうにないですが、がんばります…。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
ちなみに、ウクライナ人側のユダヤ人に対する「伝統的な」偏見の一つとして、ユダヤ人はソ連シンパでロシア・シンパだというのがあります。これは、こと文化面については間違ってないものの、政治面ではそうも限らなかった中、プーチンの蛮行によって、反ロシア・ユダヤ人ばっかになったのは確実です。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
そして、ロシア革命から100年近くの間にウクライナ人の間でできあがったこの偏見は、ゼレンスキー大統領の奮闘ぶりも手伝って、プーチンとの8年以上にわたる戦争によって、かなりの程度払拭されるのではないかと思っている。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
ちなみに、この調査結果は、ゼレンスキー大統領が誕生する前の2018年3月に発表されたもの。いま同じような調査をすれば、ウクライナ国民の親ユダヤ的傾向がいっそう顕著になるだろうことは想像に難くない。
— 直立演人 (@royterek) March 25, 2022
Ukraine bans antisemitism with new law, but does not stipulate punishments https://t.co/ZjVCL18t4F
ウクライナは2021年9月に反ユダヤ主義の表現を禁じる法令を議会で承認している。
— 直立演人 (@royterek) March 26, 2022
ゼレンスキー大統領はこの他、バンデラやシュヘーヴィチ等、ナチスと協働した過去のあるウクライナ民族主義者を通りや建物等の公的な場所の名称にしようとする最近の傾向に批判的なスタンスをとってきた。一連のリベラルな方針はすべてうまくいっているわけではないが、一定の成果は上げてきたようだ。
— 直立演人 (@royterek) March 26, 2022
ゼレンスキー大統領による一連のリベラル志向の政策はもちろんすべて順調にいっているわけではなく、しばしば右派民族主義勢力からの抵抗に遭ってきた。ともあれ、いずれにせよはっきり言えるのは、ゼレンスキーは歴代の大統領の中でウクライナの「ネオナチ」と最もよく闘ってきた大統領であることだ。
— 直立演人 (@royterek) March 26, 2022
この点に鑑みると、プーチンのいうところの「ウクライナのネオナチ」は、ゼレンスキー体制下で最も劣勢に立たされていたことになる。にもかかわらず、プーチンが「ネオナチ」打倒のためにウクライナに侵略したのは、プーチンは、ゼレンスキー体制がポロシェンコ体制よりも脆弱だとみなした結果だろう。
— 直立演人 (@royterek) March 26, 2022
だが、それがまったくの見当違いであったことは、見ての通り。
— 直立演人 (@royterek) March 26, 2022