戦争の終わり、平和とはウクライナの勝利にほかならない――ウクライナ『新欧州センター』のアリョーナ・ヘトマンチューク所長

産経にしてはとても珍しい、至極真当な記事。

 

武器供与に関しては私の考えとは異なりますが(それ以前に日本は自前で防空システムを開発・製造する能力なんてゼロだし…押し付けられなくてもUSAへおんぶに抱っこするしかないレベル)、ウクライナの勝利条件とか中国=習近平体制に対する視点、日本が現憲法下でもできる戦後復興の役割への期待とかはほぼ100%同意です。

ホンマ産経にしてはチョー珍しいインタビュー記事で、一読の価値が大いにあります。

 

勝利こそが平和 広島サミットに期待 新欧州センター所長、アリョーナ・ヘトマンチューク氏【産経新聞:渡辺浩生 2023年4月8日】

多くの国が中立の立場で傍観する姿勢をとり、ウクライナの勝利を語らずに平和を語ろうとしている。だが、この戦争に中立はありえない。市民を拷問、殺害し都市を爆撃する侵略者を支援するのか、侵略から自らを守ろうとする者を支えるかのどちらかだ。戦争の終わり、平和とはウクライナの勝利にほかならない。

岸田文雄首相が首都キーウ(キエフ)訪問を通じて「われわれは一緒に勝利する」という結束を示してくれたことに感謝している。ゼレンスキー大統領に「必勝」と書かれたしゃもじを贈ったことも、ウクライナの政治家や意思決定者を感激させた。世界がウクライナの勝利を信じていると確信することが、今のわれわれには重要だ。

ウクライナは、日本が先進7カ国(G7)議長国としてより強い指導力を発揮することを期待している。日本はすでに「公正な仲介者」の役割を果たしていると私は思う。

ゼレンスキー氏は広島でのG7サミットにオンラインで参加すると表明した。持続的な平和を達成する唯一の方法はウクライナの勝利を助けることだとのメッセージを送るだろう。(ロシアが南部クリミア半島を併合し、東部でも親露派武装勢力を支援した)2014年の侵攻後のようなもろい停戦合意ではだめだ。真の和平を追求するには軍事、金融、外交上の資源を総動員し、ウクライナが一日も早く勝利する必要がある。

日本は、法律上の制約や社会の空気のために米英のような兵器供与は難しいかもしれない。それでも日本が防空システムなどを供与してくれればとても助かる。ウクライナにとって兵器は、領土を取り戻すだけでなく、占領下での残虐行為や拷問、戦争犯罪に苦しむ人々を解放するものだ。逆説的だが人道的役割を果たすものなのだ。

われわれが必要とする支援を得られるならば、年内に戦争を終わらせ、再びロシアが侵略することのない持続的な平和を達成できる。戦争を長引かせ、中国やイラン、北朝鮮を加えた権威主義陣営が団結する機会を与えてはならない。

(ゼレンスキー氏がG7サミットで送る)第2のメッセージは核の安全だ。ウクライナは核の安全に関して日本と考えを共有している。チェルノブイリと福島での原発事故という不幸な出来事を受け、両国はこれまで原子力安全分野で協力を深めてきた。

ウクライナはロシアからの戦術核兵器の直接的な脅威を受け、ロシアに国内の原発が占領される「原発の武器化」という危険にも直面している。そして核戦力を増強する中国は、ロシアによる核の威嚇が非常にうまくいっていると評価している節がある。核の脅しによって帝国主義的な目標を達成することは不可能だというメッセージを、広島から発することが重要だ。

戦争が終われば、ウクライナは世界最大の建設現場に変わる。日本は戦後復興にも主導的役割を果たすだろう。第二次大戦と東日本大震災からの復興という豊富な経験がある。日本の企業や投資家から、より良い商慣行や企業文化がもたらされることも大事だ。

ウクライナの勝利に貢献する国だけが戦後の復興に参加すべきだと思う。中国は「ノー」という意味だ。中国は、ロシアがこの戦争に勝つ場合に限って終結を助けようと考えている。(聞き手 キーウ 渡辺浩生)

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アリョーナ・ヘトマンチューク氏  ウクライナの外交シンクタンク「新欧州センター」の創設者で所長。新聞記者、編集者として約15年間にわたって国際政治を取材。ウクライナの欧州連合(EU)加盟を長年唱えてきた。44歳。


〔※写真:ウクライナのシンクタンク「新欧州センター」のヘトマンチューク所長(渡辺浩生撮影)〕