フリーランス報道記者による、スリーマイル島原発事故と福島第一原発事故の事故後対応を比較して解説した連ツイ
コンセンサスを得ることの重要性、備忘録として
①大切なこと。1979年のアメリカ・ペンシルバニア州で起きたスリーマイル島原発事故でも、汚染水は出た。そして日本のALPSと同じようにEPICORという核種除去装置をくぐらせて核種を規制値以下にまで除去した。しかし電力会社はサスケハナ川(同原発は河川の中洲にある)への排水はしないことに決定。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
②最初は電力会社(GPU)はEPICOR処理後の水をサスケハナ川に放出する予定だった。しかし、下流に上水道の取水口を持つランカスター市が川への排水の差し止めを求めて裁判所に提訴した。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
③ランカスター市と電力会社の裁判は和解で終わった。しかし「たとえ環境基準を満たす水であっても、スリーマイル島原発由来の水はサスケハナ川に流さない」という和解条項を電力会社が受諾した。
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④これがTMI原発事故で、電力会社がサスケハナ川へのEPICOR処理水の放流を取りやめて、自然蒸発に転換した大きな理由のひとつ。
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⑤もうひとつは、電力会社、地域住民、エネルギー省などの同席する対話の場が13年間に80回以上開かれたこと。Citizen Advisary Boardという市民委員は12人。その中には反原発運動家・市民も入っていた。
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⑥このCitizen Advisary Boardは、あくまで「対話」の場であって、日本政府や東京電力の「説明会」のような「政府・東電の方針を説明する会合」とは性質がまったく違う。Citizen Advisary Boardは合意を形成するための対話の場所だった。
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⑦TMI原発事故の場合は政府・電力会社が地元住民の「合意」を作ろうと努力した。日本政府はあくまで「理解を求めた」だけで「合意」が必要とは最初から一言も言っていない。だから地元漁業者が反対するなかALPS水を排出しても「え?合意が必要なんて約束してませんけど?」と逃げることができる。
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⑧13年間に約80回の「対話の場」を重ねるうちに、住民と電力会社・政府の間にも信頼が成立するようになった。EPICOR水の自然蒸発処理が始まったのは、事故発生後12年目の1991年。93年に完了。これは対話の後半で合意が形成されたから。
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⑨この「市民アドバイザリー委員会」との対話の場は1993年、78回の会合を経て役割を終えた。1979年の事故発生から14年後である。
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⑩事情の違いを述べると
汚染水の量=TMI:9000トン。福島第一:137万トン。
メルトダウンした原子炉=TMI:1つ 福島:3つ
デブリ=TMI:130t 福島:800tつまり同じメルトダウン事故でも、事故のスケールが桁違いに大きい。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
11)日本政府のミスはもっと早期に汚染水の処理方法を検討しはじめなかったこと。2013年12月まで汚染水タスクフォース(原子力工学者10人)は始動しなかった。事故発生から2年9ヶ月である。崩壊熱を冷やすために汚染水が大量に出ることは事故直後からわかっていたのに、時間を浪費しすぎた。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
12)事故直後にヨーイドンで処理方法を検討し始めていれば、陸上処理の可能性やその用地確保などもする余裕があったはずだ。またTMIのような地元住民との「合意形成」の場もできたかもしれない。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
13)そして重要なことを追記。TMI原発事故では、EPICOR,EPICOR2というALPSに似た核種除去装置を通した水を自然蒸発させた後のヘドロに、高レベルの放射性物質がまだ残っていた。たった9000tの汚染水でも100%除去は無理なのだ。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
14)ひとつ訂正。この汚染水をEPICOR処理したあとに残ったヘドロの高レベル放射性物質は、ワシントン州のハンフォードサイトで処理された。アイダホ州の砂漠にある国立研究所(INL)に保管されているのは取り出したデブリだった。https://t.co/YYbUbJ35mj
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
15 ) TMI原発事故は、私も現場に2回行って当時の住民に話を聞いて回り、英語の資料もかなり読んだので、重要なことを書いた。日米の汚染水処理の違いである。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
①に補足。
ここでスリーマイル島原発の電力会社は、放射線防護の鉄則の一つ「放射性物質は閉じ込める」(環境中に拡散させない)を守った。これは日本政府・東電のALPS水とは正反対。
日本では
A 放射性物質を拡散した
B かつ公海に拡散したので、それまで国内問題だった汚染が国際問題になった。— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 2, 2023
さて、また徹夜で非常に重要なことを書いて公開しましたよ。
このスレッド、ちゃんと全部読んでね。
番号ふってあるから。こういう汚染水処理の先例を見ているから、今回のALPS水の海洋排水がいかにアホらしいかわかるのですよ。
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 1, 2023
Google日本元社長の辻野晃一郎さんが、大変優れた論考を書いておられます、
光栄なことに、私の動画もリンクで引用されています。なぜ日本政府は「汚染水の海洋放出」に拘るのか?#MAG2NEWS https://t.co/ByiJonkJef
— 烏賀陽(うがや)弘道 (@ugaya) September 2, 2023