東北大学・加齢医学研究所の鈴木隆哉さんによる解説
SARS-CoV-2の感染やmRNAワクチンが誘導するスパイク蛋白質、そしてそれに対する抗体免疫反応について教科書的なところから考えてみたいと思います。おそらくこのアカウント史上最長のスレッドになると思います。最大スレッド長が25と知ったので、時間をずらしながら継ぎ足していくスタイルにします。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
■ウイルスの侵入
ウイルスは他の生物(ウイルスが無生物かどうかの定義はさておき)と比べるとかなり単純な構造ですが、基本的にはウイルスの膜表面にある蛋白質がヒトの細胞膜の表面物質のどれかと親和性があると感染できる可能性が高まります。— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
インフルエンザならこれがヘマグルチニンという分子で、ヒト細胞表面のシアル酸に結合します。https://t.co/Ua5KGqmAPg pic.twitter.com/ZBXNfUJoqE
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SARS/SARS2などのコロナウイルスはウイルス側の蛋白がウイルス表面にあるスパイク蛋白質で、ヒト(動物)側の蛋白質がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)という蛋白質です。これらが結合するとウイルスの膜が開裂して細胞内にゲノムRNAを注入するわけです。https://t.co/zpsjYN0GgV
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ACEはSARSを受け入れるために進化したわけではもちろんなくて、血管系では血圧調整に関わっていますが上皮で何をやっているのかはよくわかりません。SARS/SARS2の宿主と考えられているコウモリのACE2はけっこう多様性があるようです。https://t.co/3CGgwibiS3
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このコウモリACE2とヒトACE2の相同性というか、共通してSARS-CoVが侵入できる形などがコウモリ→→ヒトのジャンプを可能にしたのは言うまでもないことと思います。https://t.co/0uT4CR1kt4
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さてこの結合を阻害できればそもそも感染(分子レベルではヒト細胞内への侵入)を防ぐことができます。色々な病原ウイルスに対する感染後免疫反応は、当該ウイルスの表面に取りついてウイルスが細胞内に侵入するメカニクスを阻害できる「(中和)抗体」が主体です。https://t.co/jHc3BKc6dZ
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なのでCOVID19ワクチンが感染メカニズムのメイン機構であるスパイク蛋白質を標的にするのは当たり前です。抗体はウイルスが壊れないかぎりウイルスの膜内には入れませんので、表面を狙うのが当然です。もちろん素人さんが「作戦がそもそも間違いだった」と「何度も申し上げ」るのは自由だと思います。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
ただenvelopeの内部にあるウイルス構成タンパク質がなんらかの「病原性」を持つ可能性はあって、それに対する抗体がなんらかの臨床的効果を発揮する可能性はあり、これはいろいろなウイルス(に対するワクチン開発)でも研究対象だと思います。下はSARS-2の例。https://t.co/4tIdfaoGvB
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■mRNAワクチンのメカニズム
さて日本や先進国を中心に接種数が多いmRNAワクチンについて特に見ていきたいと思います。— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
まず蛋白質発現の設計図となるmRNAがこのワクチンでどのように使われているか、修飾されているか、そしてその修飾されたRNAが如何に「自然」かということについては以下のスレッドにまとまっています。https://t.co/9HT20JTQFZ
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またこのmRNAのあまりにも高い有効性を前にして自らの崇高な陰謀論が無意味となりかねない恐れから、このmRNAを包み込む脂質にmRNAワクチンの有害性が示唆できるかもしれない背景が少しでも出てこないかと一縷の望みを託している人々へのコメントはここに集約してあります。https://t.co/l6xURCS9b6
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はじめに断っておきたいのは、免疫反応自体はすべて「自然」です。免疫系は「異物」を認識し排除するために進化をとげた系で、そのきっかけが感染であるかワクチンであるかの違いがあるだけです。ですので下に述べることと本質的に同じことは感染でも起こります。
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さて筋肉注射されたmRNAはまず横紋筋の周囲にいる樹状細胞か、あるいは横紋筋細胞自体に取り込まれます。横紋筋細胞もmRNA医薬の有力なタンパク発現プラットフォームであることについてはいくつかの知見があるようです。https://t.co/pIHb6LFsyU
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樹状細胞は古典的な免疫細胞の一つで、異物と認識される物質(蛋白質)を他の免疫細胞に差し出す「抗原提示細胞」です。樹状細胞で発現したスパイク蛋白質はそのまま樹状細胞に、筋肉細胞で発現したスパイク蛋白質はおそらく樹状細胞に渡されて、
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リンパ流を通っておそらく直近のリンパ節にたどり着きます。https://t.co/CVP4GcZqoT
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上腕筋群にワクチンを打つことが多いので、大体は同側の腋窩リンパ節に運ばれるはずです。PETでもそのような反応をとらえるような報告があります。最近では日常的に見ます。https://t.co/uuwH88csYx
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リンパ節へ辿り着いた樹状細胞はそこにいるナイーブB細胞を探します。ナイーブB細胞というのはこれまで一度も抗原と接したことの「素」のリンパ球です。このB細胞が抗体を産生することになります。
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■B細胞の発達と成熟・遺伝子再構成
ここから伏線に入ってB細胞の発達について述べます。 B細胞のBとはBoneの頭文字で、骨髄Bone marrowで生まれます。大本の造血幹細胞から分裂・分化を経て生まれます。この過程で、B細胞が産生する抗体をコードする遺伝子に変化が生じます。https://t.co/6EB4GRiQzH— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
そもそもこの世界には数えきれないほどの病原体・(人にとっての)異物があります。B細胞はこれらのあらゆるものに結合する抗体タンパク質を作り出すことができますが、一つの遺伝子からなぜそれが可能なのでしょうか。抗体をコードする遺伝子は父親由来と母親の2種類しかありません。
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もし1種類の抗体に対して1つのDNAコードが対応するとしたら、DNAは無限の長さが必要ですが、そうなってはいません。ではどうやって何種類もの抗体を生み出せるのか。
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抗体は蛋白質ですが、この蛋白質は(他の多くの蛋白質と同様)いくつかのサブユニットという固まりに分かれます。抗体については「鎖」という言葉が当てられています。
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例えばその鎖の一つであるH鎖(HはHeavy、つまり大きい)を見てみると、そのH鎖をコードするDNAにはV・D・Jという三つの領域があり、それぞれのセグメントの中にはよく似ていながらも少しづつ違うDNAセットがいくつもあります。https://t.co/3m4AwycIVO
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B細胞が分化して最終的にナイーブB細胞になる過程で細胞分裂を起こしますが、その分裂の際にこれらのVDJの領域からいくつかの領域のみをピックアップして完成されたコードが作られます。
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ここでものすごい数の組み合わせが可能でありその組み合わせによってそれぞれユニークなナイーブB細胞が生まれます。要するに一つ一つ抗体遺伝子の異なるB細胞がいくつもできることになります。https://t.co/N5Ir2PHfJm
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こうやって親から受け継がれる抗体遺伝子は2種類しかないにもかかわらず、抗原に晒される前から既に想像を絶する種類の抗体を産生できるB細胞集団が生まれます。この現象(VDJリコンビネーション)を最初に明らかにしたのがノーベル賞となった利根川進先生の業績です。1976年。https://t.co/2tUiiZ7iNL
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これが「初期段階の多様性」です。実際一つ一つのB細胞が全てユニークではないと思いますが、それぞれ異なる受容体を表面に持つナイーブB細胞が一体どれくらいのオーダーでできるのか、とにかくものすごい種類のB細胞が生まれるわけです。
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その表面の受容体となっているのがイミュノグロブリンM(immunoglobulin M, IgM)です(IgDもあります)。初期状態の抗体です。https://t.co/WBzZUHNQv1
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■胚中心(Germinal center)とSomatic hypermutation
さて抗原を捕まえた樹状細胞などがリンパ節へやってきてナイーブB細胞を活性かさせます。活性化されたナイーブB細胞が抗体を分泌するまでには主に2つのルートがあります。https://t.co/wzODIlKhDP pic.twitter.com/NfTqf7uRgO— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
まずはそのナイーブなB細胞がすぐに(短命な)形質細胞に分化してそのままIgMを分泌する反応です(上図のEF response)。要するにナイーブB細胞が生まれる時の組み替えで生じた多様性の中で偶然反応したものがそのまま分泌されるというものです。https://t.co/Esxebtl1H7
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IgM自体はその抗原に特異的にトレーニングされたわけではないので後に生まれるIgGより一つ一つの親和性は低いようですが、鎖が5(ないし6)量体となっているためその親和性の低さを補うことができます。(5量体とするか10量体とするかは、IgGを2量対とするかどうか)https://t.co/WBzZUHNQv1
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このやや無差別なIgM分泌が新規病原体に対する最初の液性免疫反応となります(液性=抗体による免疫)。ちなみにこの最初に分泌されるIgM、一種類ではないはずです。なぜなら樹状細胞によって蛋白質のどの部分が提示されるかというのは別の問題で、そこにも多様性があります(エピトープの多様性)。
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スパイク蛋白質のいくつかの部分が標的に設定され、それぞれの標的に異なるクローンのB細胞が反応するはずです。ですので何種類かのIgMが分泌されるはずです。
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もちろん個別IgMは交叉性が高い(より特異性が低い)と考えられるので種類は多くないかもしれません。このあたりの定量は技術的にとても難しいと思います。
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さてもう一つの道ですが、樹状細胞等に提示された抗原を認識したB細胞は同じ抗原に対応するT細胞(Tfh細胞)とペアになって増殖を始めます。この分裂を始めたB細胞は胚中心Germinal centerと呼ばれる領域をリンパ節内に形成します。https://t.co/p6XCPxy4bR pic.twitter.com/XeXbIRXouQ
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この分裂時に、B細胞の抗体遺伝子はさらなる変化を遂げます。抗原提示とT細胞からのシグナルをうけたB細胞にはAID(activation induced cytidine deaminase)と呼ばれる酵素が発現し、その酵素がB細胞DNAの抗体コーディング領域にランダムな点突然変異を入れていきます。 pic.twitter.com/HHox7bkYPN
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これもまたすごいシステムです。Somatic hypermutationと呼ばれます。https://t.co/m82THcRNeX
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遺伝子のコピーエラーは癌などの重大な疾患を引き起こすわけで、そのエラー修復機能というのは非常に精巧にできているのですが、染色体のこの部分だけDNAは積極的に変異を入れていきます。非常に印象的なシステムです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
この「ダーウィン的」なプロセスですが、胚中心の中でこのようにランダムな変化を遂げたB細胞は選択を受けます。要するに提示された抗原に対する親和性が高まったB細胞は生き残り、親和性が低くなったB細胞はアポトーシスのシグナルを受けて死滅します。 pic.twitter.com/4Lk9oSsZkQ
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
これはランダムな変異なので、ほとんどの変異は捨てられますが、いくつかが非常に(1000倍のオーダーで)親和性の高いものに変化します。https://t.co/b26D8c6OtZ
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
この最初のラウンドが終了するのが7日から10日と言われていて、ラウンドを終えたB細胞は一部が形質細胞となってIgGの分泌を始めます。ですのでこの頃から血中にIgGが検出され始め、IgMは役割を終えてなくなっていきます。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
さてこの選択ラウンドですが1回で終わるとは限りません。セレクションを受けたB細胞がまた次のラウンドに入ることもあります。これは抗原・病原体によって違うようです。https://t.co/KOycgecZm8
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
マウスの実験では卵由来の蛋白などは数週間で胚中心が解消してしまうようですが、インフルエンザを打ち込むと何ヶ月も胚中心が続いているようです。つまりその間ずっと抗体の最適化が行われているということです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
まさにディープラーニング・機械学習のような感じです。何ヶ月も変異をトライして抗体の最適化を図ることもできるようです。
(つづく) pic.twitter.com/Md4yPBsgIE— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 22, 2022
■抗体最適化の意味
ところでこのような最適化がなぜ必要なのでしょうか。なぜ最初のIgMだけではダメなのでしょうか。事実関係としてIgGにはIgMに加えた有用性があるというのは疾患から明らかです。— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
例えば高IgM症候群という病気ではB細胞がIgM分泌タイプからIgG分泌タイプへ分化できないためにIgGが産生できず、慢性感染症のために予後不良な疾患があります。IgMだけは十分ではないと考えられます。AID欠損なでど上の議論ででてくる酵素の欠損などが病態メカニズムです。https://t.co/NKtEn5482K
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
IgGの必要性とはなにか、簡単な問題ではないかもしれませんが、少なくともなんらかのクオリティーの問題が存在するのだと思います。IgMだけでは戦いきれないようです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
もう一つ考えられるのは経済性です。IgGは産生されたあとはわりと長生きします。血中IgGはFc受容体を介して血管内皮細胞に取り込まれますが、細胞内で分解はされずにリサイクルされて血中に再放出されます。https://t.co/jZI0WxSAJ0 pic.twitter.com/JZrCGpJ5v5
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
このためIgGの半減期はものにもよりますが数週間程度と長く、一度産生するとしばらく生き残ってくれます。これは因果関係がどちらかわかりませんが、IgGが獲得免疫においてエネルギー効率的に有利であることを示唆しています。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
とはいえIgGも経済性をつきつめればIgMと一緒で、仮に生涯に遭遇した全ての抗原に対してImmunoglobulinを高濃度でずっと作り続けるとなると、エネルギーの問題もそうですが血清の粘性も高まります。つまりドロドロになります。また血液凝固能力に異常が生じます。これはこれで問題があるはずです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
例えばIgMが異常に産生される血液癌の一つ形質細胞腫ではマクログロブリン血症が問題になります。 もしIgGの「椅子」に限りがあったとしたら、「重要な」つまり脅威となりやすい病原体に対するIgGを血中・粘膜面に高濃度で常駐させておき、
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
他のものはある程度それより低い濃度で維持しておくという戦略も考えやすいです。実際Ig-Seqと呼ばれる手法を使うと、血中にあるIgGの濃度にはかなり偏りがあり、数種類のIgGがかなりドミナントであることがわかっています。https://t.co/yhvND0xvOZ
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
さらにはIgGを産生せずに、しかし再侵入時にはすぐさま形質細胞に分化して抗体産生を始められるようなB細胞をとっておくということもスマートです。免疫系が脅威の頻度が低いと判断した抗原に対するB細胞クローンを念のため体内に保持しておく、これがまさにメモリーB細胞の役割です。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
このメモリーB細胞は既に抗体遺伝子の体細胞変異を胚中心で起こしたものです。同じ抗原(エピトープ)に対して複数のパターンに最適化されたB細胞クローンができると思いますが、その一部は抗体産生をする形質細胞に分化せずに脾臓や骨髄などでじっとしています。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
再度同じ抗原(病原体)が侵入してきた場合はすぐさま分裂・分化し、すぐに抗体を産生してディフェンスに回ります。血中中和抗体が「消えてしまった」様にみえる2回ワクチン接種者でもおそらくこの反応は迅速に起こっているはずです。https://t.co/C97V5XVnIZ
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
■異なるクラスの抗体
ところで免疫反応により誘導されるImmunoglobulinはIgGやIgMだけではありません。ウイルスなどの病原体が侵入してくる口腔内・鼻腔・気道・消化管などの粘膜面にはIgAというタイプの抗体が分布しています。https://t.co/wbJGSs6diG— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
IgGのときと同じ様に、Somatic hypermutationを起こしたB細胞は粘膜面にIgAを分泌する形質細胞にも分化します。これはインフルエンザワクチン(筋注)でもそうですし、COVID19ワクチン(筋注)でも確認できています。https://t.co/FRQeMJaR0yhttps://t.co/D7zi5OWxaQ
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
ただ唾液を実際に調べると、IgAの検出は血中ほど著明でなく、2回接種の効果も個人差が大きいいうのが今の所のデータです。全く出ていない人も多い。https://t.co/ba7kIxnRrZ
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
しかもIgGにはみられるような「感染による」上乗せ効果がIgAについては認められません。このあたりがいわゆる重症化の少ない「ブレークスルー」感染の多さの背景になっていると思います。ここはバージョンアップしたワクチンに期待するしかありません。https://t.co/axAlpmProk
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
このように粘膜面の免疫は非常に難しいというのがわかります。血中やリンパ組織が感染の主座であるような感染症にはワクチンは非常に効きやすいですが、呼吸器系はそもそも難しいというのは否定できないように思います。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
ただIgGがたくさんでていて感染に対しても数10%の感染予防効果を示しているというのは例えばインフルエンザワクチンにはないような効果に思われます。比較的粘膜面にもよく出ているIgGのおかげかも知れません。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
またこの課題をクリアするための研究も進んでいて、粘膜に効かせたいのだからまさに鼻腔粘膜にワクチンを吹きかけるというやつです。実際に研究が進んでいて動物実験レベルでは効果が確認され、臨床試験に入っています。https://t.co/NO27g5bm6Vhttps://t.co/xErdzoq7qb
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
ちなみにこの作戦で岩崎先生のグループはSARS2ではなくSARS1のスパイクを使って、SARS1にもSARS2にも反応する交叉抗体ができるというすごい発見をしています。(つづく)https://t.co/jZLHE1q1kL
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 23, 2022
■抗体多様性とワクチンスケジュールの意味
さてmRNAワクチンの最初の2回はどういう意味合いなのか。抗体の成熟を考えるなら近すぎるのではないかというようなことは言われていて、私もAZの8週間のほうがリーズナブルと考えていました。これはそうではないかもしれません。https://t.co/V2Eztbxf80— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
1回目の接種からおそらく3週間すると胚中心での成熟の1ラウンドは教科書的には終わっているはずです(実際感染者のサンプルでもクラススイッチは1週間後には始まっていることが調べられていました)。https://t.co/Byw1ls1eGU
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
インフルエンザの研究から考えれてもおそらく胚中心による抗体成熟は数ヶ月つづくだろうということは十分考えられました。https://t.co/dbqTuJ84gI
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
その最適化の間に抗体の性能向上があることは間違いないところですが、当時はとにかく人々の免疫レベルを早く上げる必要がありました。であれば選択ラウンドを1〜数回済ませた程度のB細胞でも戦線にどんどん投入する必要があると考えてもおかしくありません。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
3〜4週間であれば1回目でSHMを終えた特異的B細胞がメモリーになったり形質細胞になったり、一通りのことを一回通しているはずです。そこに同じシグナルが入れば、まだ残っているナイーブBを免疫反応に呼びこんだり、すでに出来上がった抗体多様性の量的コピーを増やすことができそうです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
ダブルプライムとしての2回めは、その初回ユニットを(最適化は度外視して)増量するねらいがあったと考えてもおかしくないと思います。さらに形成された胚中心が最適化をしているすぐ横で追加のナイーブB細胞を呼びだしとにかくIgGを分泌する形質細胞を誘導する方針には瑕疵は考えにくいです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
■ウイルス変異とブースター、抗体多様性
さてCOVID19、とくにSARS-CoV-2の変異株について具体的に考察していきます。記憶に新しいオミクロンを例に取るのがわかりやすいかもしれません。教科書を超えた領域に入ってきており、なかなか難しいです。— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
オミクロン株は既存の感染によるIgGやmRNAワクチン2回接種でできるIgGではほぼ中和できないというようなデータがでていました。これがどのような機序で生まれたのかというのは大きなそして興味深いクエスチョンです。https://t.co/GocLfN32jc
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
以前に回復者血清をウイルス培養に加えることで人工的に抗体耐性のウイルスを作る試みについてスレッドをつくりました。実際に回復者血清の「選択圧」のみでは完全に中和を逃れるウイルスは誘導できず、https://t.co/JqMoz7mWGT
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
回復者血清をサバイブした一番候補に近いものにデルタやベータの変異を追加するとかなり免疫逃避ができるスパイクが生まれたという研究です。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
ちなみに上記スレッドをみて「ワクチンがオミクロンを誘導したのだ」と考えられる人がいるらしく、ある偏った目的のためならばヒトのイマジネーションとはどこまでも尽きないのだとの認識を新たにしています。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
上記スレッド内で話題にした論文内のPMS20という存在を考えるとたしかにオミクロンは既存の免疫圧力から「エスケープ」したものなのかもしれません(じつはデルタなどの変異と同じものをいれないとPMS20はできないのですが)。ただそのエスケープの内容はどういうものなのか。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
実際のところオミクロンは免疫の持続的な圧力からホストを変えつつエスケープしたと考えるにはあまりにも遺伝的に遠い位置から出ています。またワクチン免疫圧の強かった先進国で猛威を奮ったデルタと反対方向から生まれています。https://t.co/Pt1hFs858R pic.twitter.com/P9Mm1RNmoC
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
また一方で中和抗体が見えないにもかかわらず、実際の臨床を見ていると2回接種でもある程度オミクロンによるCOVID19を防いでいるとみられるようなことがいろいろな国のデータでわかります。90%でないにしても。日本も同じです。https://t.co/8zFCNSKotI
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
また3回目ブースターのあとの抗体価回復具合が非常に速いです。https://t.co/1Mg5Ry4pxPhttps://t.co/uuO5zyfXahhttps://t.co/8zFCNSKotI
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
さらにワクチン2回→オミクロンの感染では、オミクロン1回感染よりもより高い「オミクロンへの中和抗体」(のみならず他の株へも均一に有効な中和抗体の集団)ができています。https://t.co/F3qOP3aA42
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
これはどういうことなのでしょうか。ここではT細胞のことは考えません。3回目ブースターのあとに改めて新しく胚中心での抗体成熟が行われてよりオミクロンへの親和性を高めていると考えるには少し速いとも思われます。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
それよりはむしろ、3週間間隔の2回接種により生まれたいくつかの(オリジナルスパイクに対する)メモリーB細胞のうち、オミクロンへの親和性が高い(特異的な)ものがすぐさま分裂し、オミクロンへの中和も可能な抗体を産生する形質細胞へ分化したと考えるたほうがしっくりくるような気がします。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
ここは完全に教科書を超えた領域です。わかりません。あくまであくまでSpeculationとして、3週間隔のmRNAワクチン接種によりすでにかなり広い抗体レパートリーをもつB細胞集団ができていて、そのなかの一部がオミクロン感染(やブースター)に反応して比較的速く出てきているのかもしれません。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
それであればこれも免疫系がすごい(すでに予測している)ということになるかもしれません。
ではこれで終わりなのか。(なんと続くけれども、もう完全に教科書的でなくなっているので別スレッドにする予定)。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) February 24, 2022
(Appendix) ■ではこれで終わりなのか。
以上ことを考えてみても、2回の接種で実はかなり広範なエピトープに対応できる抗体遺伝子多様性が胚中心内のB細胞で終了していたのかもしれません。— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
あるいは数ヶ月たっても胚中心のなかで抗体最適化が進んでいて、数カ月後の感染ないしブースターが手持ちのレパートリーから顕在化していないメモリーを呼び起こしたのではないか。文学的で機械論的には適切な表現ではないですが、ナラティブとして受け入れやすいように思います。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
また4回目ブースターはオミクロンへの「臨床的効果」を必ずしも向上させないかもしれません。つまり7〜8ヶ月内の3回で得られる多様性と発現レベルは、少なくとも血清内では限界を迎えている可能性はあります。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
それは抗体多様性と強度が十分であるということかもしれませんが、これはわかりません。https://t.co/z4oaJU6Pdt
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
一方で最近、オミクロン対応ワクチンのサル実験情報がでてきました。オリジナルx2+オミクロン配列の3回接種はオリジナルx3に対してメリットがあるとはかならずしも言えないデータです。https://t.co/PmTzCabwzA
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
これが意味するところは複雑だと思います。単純にオミクロン配列の「抗原性が低い(ほぼトートロジー)」可能性がまずあると思います。一方で胚中心が完全に新しい反応を初めている可能性があります。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
このあたりのディスカッションはここで非常に詳しく感動的に面白い形で議論されていますので、英語が聞ける方はこちらを聞くほうが圧倒的に有用です。https://t.co/Rb414o58Ot
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
そもそものはじめ、VDJリコンビネーションをおえたナイーブB細胞のうちどれくらいが新規抗原(病原体)に反応して胚中心を形成するかについてはよくわかっていませんでした。上のポッドキャストによると胚中心一つにつき3つくらいと昔は言われていたとのことです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 1, 2022
しかしこの論文であきらかになったのは、胚中心でトレーニングラウンドを始めるクローンは100とかそういうレベルであるということでした。エリートではなく比較的雑多な集団から予選会が始まっているということです。https://t.co/oTXijmUMIu
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この壮絶に美しい実験ですが、カラーで示された点々が一つ一つのB細胞クローンです。i)とii)は胚中心形成が始まってから79日と52日のもので、一色になっているということは一つのクローンが「勝利」していることを意味します。 pic.twitter.com/M9tmIkpRXc
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しかしiii)とiv)すなわち19日と32日ではまだ文字通りいろいろなクローンがせめぎ合っています。決着がついていません。 pic.twitter.com/fRDgtrXANM
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技術的な説明は省きますが、上の写真は同じ色の細胞であれば同じ抗体遺伝子を持っているということです。つまりおそらく抗体の最適化のために何回もMutationを入れて試しながら何ヶ月もトレーニングを続けているということなのだと思います。
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),ii)のようにクローンが胚中心を埋め尽くすまでにはそれくらい時間がかかるということで、またさらにこの「数カ月後」という時点でブースターを行えばより成熟した抗体がドミナントになっているのだろうという推測の基礎的なデータになっているともいます。
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しかしここで本当にそうなるのか。この実験をつきつめた4年後の論文では、かならずしもそうでない可能性が示されています。もし成熟した抗体を作ることができる記憶B細胞の存在を前提にブースターを行えば、
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エリートとなったクローンがまた胚中心でトレーニングをはじめて「さらに良い記憶」を作りに行ってもいいと思います。
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ただ少なくともこの実験ではそうならないようです。技術的にかなり混み合っているので結果だけのサマリーを示すと、たしかにブースターは既存の多様なB細胞クローンをそれぞれ刺激してたくさんの抗体産生細胞を生み出しますが pic.twitter.com/QgniKstVY6
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1回目の免疫トレーニングでできた記憶B細胞を再びトレーニングするわけではないらしいということです。つまりまた新しいナイーブ細胞を呼び出し、かついくつか(5%とか)の既存メモリーB細胞と競わせるようです。https://t.co/jJXnUynJo7
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これが「有利」なのか「不利」なのかについては予断は許さないと思いますが、Original antigenic sinという言葉で表現される「ブースターの難しさ」をここに帰することも可能かもしれません。
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またオミクロン配列株のブースター効果がオリジナル配列ワクチンよりも若干ブーストしなかった件については、おそらくもともとある高親和性のB細胞の反応が悪いと考えてもいいし、
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またこういったときに2次胚中心で何が起こっているのかというのも非常に興味深いです。全く新しい抗原としての胚中心ができている可能性も否定できず、オミクロン配列もさらに同じくオミクロン配列でブーストするとどうなるのか、このあたりも面白いかもしれません。
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そうすると次の問題はこの持続時間ということになろうかと思います。COVID19ワクチンについては3回目以降はまさにNo man's landです。ただ高齢者の中和抗体減少はこれまでの知見を基にすれば避け難いようにおもいます。(Appendix 2へ続く)
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(Appendix 2)■免疫老化
高齢者の「いわゆる免疫」も老化するというのはわかっています。高齢者は新しい抗体を作る能力が低く、抗体の多様性が少ないかもしれません。https://t.co/yhvND0OyQZ pic.twitter.com/d5ZQE4ZIFA— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
これはCOVID19に限ったことではなく、ワクチンによる賦活が難しいのは他の病原体でも同じです。筋トレと同様、高齢者はトレーニングが難しいということかもしれません。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
単純に文学的な意味合いと同じ老化なのか、あるいはいろいろな抗原に何十年もさらされてきて空きメモリーが少なくなっているのか(これも文学的ですが)。インフルエンザの検討では抗体の特異性が低くなるというようなことも言われています。https://t.co/mmg9zAVbZx
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
臨床的な検討だけでなく、実際に高齢になるとB細胞の機能自体が落ちるという知見もまとまってあります。Age-asociated B cellというようです。https://t.co/nfnvjE0Nvk
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
端的にいうと造血幹細胞からナイーブB細胞への分化能自体が落ち、実際にナイーブB細胞の数が減るということです。(下図、下段) pic.twitter.com/YDzlVzub5Q
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
これはすなわち上で述べたような胚中心形成に対して明瞭なボトルネックになります。https://t.co/Qfv3hA2yAs
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
このような胚中心の議論だけでなく、その周辺の殆どの免疫に関する機能が老化によって衰えます。https://t.co/iWwUn5DD2j pic.twitter.com/03Yde9c6qo
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
これはそもそものディフェンス力が弱くなることを示していますし、SARS-CoV-2のように「これまで人類への感染がない全く新しいウイルスで、既存免疫などなんの役にも立たない病原体」に対して高齢者がとくに脆弱である理由となっています。
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そういえば最近、日本ではFactorXがなくなったと主張する素人の方がいたようです。https://t.co/TyUtWBjYIR
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さてではどうするかということですが、これは生物学的な事象なのでEnhanceすることは難しいと思います。ただ減少するとはいえ、mRNAワクチンが非常に高い抗体誘導を行うという事実および、重症化の著明な低下をもたらすことを考えると、3回目接種以降の動態がどうなるかは非常に興味深いところです。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
あるいは4回目5回目もおそらく高齢者であっても既存の抗体レパートリーをブーストする力がまだあると思いますので、6〜12ヶ月おきにブーストするというのは今考えられる手段としてはありなのかもしれません。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
この辺りは特に「ワクチンに効果がない!」みたいなナラティブに収束させたい願望もあるかもしれませんが、死亡率10%が1%に下がる手段に対して「まだ1%も死ぬ」と拒否することがどの程度正常な判断なのかという問題になろうかと思います。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
この事実にナラティブで対抗するためにはワクチンの副作用が「見えないところで」凄まじく広がっていると陰謀しなくてはなりません。実際にそのような陰謀論に収束しているようですね。陰謀論は陰謀論者にとってはいずれにせよ理論です。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
この話に対する私の悲観的な見積もりは、このUncannyなスレッドに対するコメントに込めました。実際のところ65+の人は今後10年以上ずっと銃口のようなものが向けられている状態になる可能性が高いかもしれません。https://t.co/FNYumbX59K
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
残念ながらヘラヘラとAnti-vaxナラティブをかましている場合ではないと思います。
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022
また一方でかねてより申し上げている通り、6ヶ月〜2歳児のワクチンがどのくらい効果と持続をもたらすのかというのは今世紀後半の人類にとって極めてクリティカルであるように思います(完)。https://t.co/WtlPHSXKjd
— Takaya Suzuki MD, PhD (@suzuki_takaya) March 3, 2022